「誰にも話せない」ママを助ける“1308” 韓国の「危機妊婦相談電話」導入7カ月で相談1395件

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出産した子ども2人を殺害した後、冷蔵庫に保管した「水原冷蔵庫乳児殺人事件」を契機に韓国で導入された「危機妊婦相談電話(1308)」が、開通後7カ月で一定の成果を上げていることがわかった。経済的・心理的理由で中絶や「ベビーボックス(赤ちゃんポスト)」への子ども遺棄を防ぐために施行された制度が、多くの子どもたちを家族のもとに戻す役割を果たしている。

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5月13日、国会保健福祉委員会所属の「国民の力」キム・ミエ議員によると、危機妊婦相談電話が昨年7月の開通から今年3月までに“危機妊婦”1395人の相談を受けた。

“危機妊婦”とは、経済的・身体的・心理的に困難を抱えた妊婦を指す。彼女たちは韓国で「1308」に電話をかければ、24時間いつでも、公的相談機関に指定された全国16カ所の地域相談機関から相談サービスを受けることができる。

今年出産したシングルマザーのパク・ジョンアさん(仮名・34歳)もその一人だ。パクさんは子どもを中絶させようとした恋人と連絡を絶ち、未婚の母となった。その後、支援が受けられる場所を探していたなかで、危機妊婦相談電話を知ったという。

パクさんは『時事ジャーナル』の電話取材に「相談員が精神的・肉体的な健康状態を継続的に気遣ってくれた」とし、「(他のシングルマザーも)1308に電話して相談を受ければ、心理的に安定すると思う」と伝えた。

危機妊婦相談電話は、育児に自信がなく、子どもを養子に送ろうとした妊婦の心も変えた。相談員との相談を通じて、128人の危機妊婦が、自分の手で子どもを育てる選択をした。

キム・アヨンさん(仮名)は計画にない妊娠によって、子育ての自信を失っていた。キムさん病院で匿名で出産し、その後、子どもを養子に出す「保護出産(内密出産)」を申請していたが、生まれた子どもの顔を見て、このまま送ることはできないという思いがこみ上げた。

そして、「1週間、時間をかけて考えてみて」という相談員の言葉に彼女は考えを変えた。その間、育児支援印鑑するさまざまな制度がある事実も知った。結局、キムさんは内密出産申請を撤回し、子どもを自らの手で育てることに決めた。

ソウル市の危機妊娠相談電話サービスを担当する「エラン院」のイ・スクヨン院長は、「はじめは内密出産を選択し、養子に出すことを決心したとしても、生まれた子どもの顔を見ると心が揺れる産婦たちがいる」とし、「熟慮期間中、専門の相談員が産婦を対象に、育児の際に受けられる恩恵と、今後起こり得る困難を克服する方法について詳細に伝え、できる限り子どもを育てようと説得している」と説明した。

写真はイメージ
(写真=photoAC)

危機妊婦相談電話サービスは、「危機妊娠・保護出産制」の一環として導入された。

この制度は、危機妊婦が自身の手で子を育てることを選択できるよう、妊娠・出産および育児に関する支援制度の案内などの相談を行い、やむを得ない場合には医療機関で匿名での診療・出産ができるよう支援するものだ。生まれた子どもは出生登録および保護措置がなされ、国家の責任のもとで保護される。

制度は導入初期から「合法的遺棄を助長する」との批判にさらされるなど、紆余曲折を経た。しかし、専門家たちは「内密出産は最後の避けられない手段に過ぎず、危機妊婦と子どもを保護するシステムに注目してほしい」と繰り返し強調している。

とあるシングルマザー支援相談機関の相談員は、「(人々は)内密出産だけを断片的に見がちだが、制度施行によって危機妊婦を専門的に相談・保護する我々のような機関ができた」とし、「突然の妊娠で他に助けを求めるところが見つからず、迷っていた多くの危機妊婦が、相談を通じて支えられている」と語った。

「危機妊娠および保護出産支援、児童保護に関する特別法(危機妊娠・保護出産法)」を代表発議したキム・ミエ議員は、「内密出産より自分の手で子を育てる選択をした妊婦が多いというのは、“遺棄を助長する”という批判が誤りであることを証明している」と反論した。

実際、昨年7月から今年3月までの期間、内密出産を選択した危機妊婦は73人だったのに対し、自分の手で子を育てる選択した妊婦は128人と、内密出産を選んだ数の約2倍に上った。このうち、17人は内密出産を申請していたが、相談員との相談を通じて申請を撤回した。

そのうえで、キム・ミエ議員は「内密出産は最後の手段だ。この制度の核心は、どこにも言うことができず、一人で不安に震える危機妊婦に心理的安定をもたらすことにある」とし、「さらに一歩進んで、危機妊婦が出産後に自ら育児できるよう支援することが重要だ」と強調した。

(記事提供=時事ジャーナル)

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