オリンピックが“アマチュアスポーツの祭典”と言われたのは、もはや遠い過去の話。選手のプロ化が進み、企業からスポンサードを受けている競技団体は多い。
というよりも、もはや企業のスポンサードなくしてオリンピックは成り立たない。それはワールドワイドオリンピックパートナー、ゴールドパートナー、オフィシャルパートナーと細分化して、スポンサー集めに余念がないIOCを見ても一目瞭然だろう。
もちろん、韓国でも黙々と汗するアスリートたちを支える巨大な存在がある。韓国屈指の財力を誇る企業たちだ。
例えば2016年リオデジャネイロ五輪で韓国選手が出場した24種目のうち、11種目は韓国財界ランキング50位内の大企業から支援を受けていたことが、『THE FACT』を通じて報じられた。
残りは中小企業から支援を受けていた。企業は支援種目の応援団を自称しながら、積極的に支援活動を展開していたそうだ。
韓国で企業によるスポーツ支援が本格化したのは、1988年ソウル五輪がきっかけだった。当時韓国政府は「オリンピックを成功させるには大企業がそれぞれ種目を担当して支援すべき」と、国内の大企業に対して圧力をかけた。
これが韓国の少数精鋭エリートスポーツ支援の始まりだった。
そのおかげで大きく成長した種目の代表格と言えるのが、アーチェリーだろう。故チョン・ジュヨン現代(ヒュンダイ)グループ会長は、80年代に大韓体育会長を務めたことがきっかけで、アーチェリーへの支援を始めた。
現代グループのアーチェリー支援はチョン会長の死後も続いた。支援金額はここ30年間で約400億ウォン(37億円)に及ぶという。
韓国が“アーチェリー強国”として名声を高める背景には、現代グループという大きな存在があったわけだ。
韓国で唯一のワールドワイドオリンピックパートナーであるサムスングループも、長年に渡って韓国スポーツを支援してきた。
サムスンの故イ・ゴンヒ会長がレスリング選手出身ということもあり、レスリングには300億ウォン以上の支援を行ってきたと言われている。故イ・ゴンヒ会長自らが韓国レスリング協会会長を務めた時期もあった。
また、財閥ランキング上位の常連のハンファ・グループは2002年から韓国射撃連盟を支援している。毎年全国大会を開催しており、その額は累計で125億ウォンにもなると言われている。
政府からの圧力がなくなった今も、多くの企業が自発的にスポンサーを務めている。
前出の『THE FACT』が報じたところによると、韓国レスリング協会、韓国バレーボール協会、韓国ウェイトリフティング連盟、韓国ヨット協会、韓国柔道会、韓国水泳連盟、韓国陸上競技連盟、韓国漕艇協会、韓国体操協会、韓国カヌー協会などが、中小企業の支援で成り立っている。
広報手段や社会貢献の一環など、企業がスポーツを支援する理由は様々だが、企業の支援が韓国スポーツの動力のひとつになっていることに変わりはない。
ただ、経済悪化によってスポーツ支援から手を引いている企業が増えているのも事実だ。
財界ランキング12位の現代重工業、24位の大宇造船海洋、48位の韓進重工業などは、造船・重工業業界の長引く低迷により、スポーツ支援から撤退した。そうした企業の撤退によって廃れていくスポーツ種目もある。
種目によって企業からのスポンサードが得られず、結果的にスポーツ界でも貧富の差が出る現象は、韓国スポーツ界の今後の課題にするべきだろう。
(文=慎 武宏)
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