6月3日の大統領選まで1カ月を切るなか、「李在明(イ・ジェミョン)独走」体制を揺るがす最大の変数とされる「汎保守ビッグテント(大連合)」のための“一本化”の行方に、韓国政界の関心が集まっている。
ただし、ビッグテントの中核を担う与党「国民の力」のキム・ムンス大統領候補と、無所属のハン・ドクス予備候補が、一本化協議の初動から難航を示しており、先行きはまったく予測がつかない状況だ。
では、これまでの大統領選で、候補一本化はどれだけ成功し、結果にどう影響を与えたのだろうか。
最初の成功例は、2002年の第16代大統領選における①「盧武鉉(ノ・ムヒョン)-チョン・モンジュン」の一本化だ。
この時の構図も、「イ・フェチャン独走」に対して他の候補が追う構図であり、現在の「李在明独走」と類似している。当時、「新千年民主党」の盧武鉉候補は支持率が急落し、党内からはチョン・モンジュン(国民統合21党)候補と一本化し、候補を辞退すべきとの圧力が高まっていた。
最終的に両者は選挙42日前に一本化協議に入り、党員投票50%、世論調査50%による「国民参加型予備選」を実施することで合意。その結果、選挙25日前に盧武鉉が一本化候補に選出された。
選挙前日にはチョン・モンジュンが突然、盧武鉉候補への支持を撤回するという騒動もあったが、むしろこれが同情票を呼び、盧武鉉候補がイ・フェチャン(ハンナラ党)候補を破る大きな要因になったと分析されている。
その直前に行われた1997年の第15代大統領選での②「DJP(金大中-キム・ジョンピル)連合」も、代表的な一本化の成功例だ。
選挙45日前、金大中(新政治国民会議)とキム・ジョンピル(自由民主連合)は、事前の予備選なしで候補一本化に合意。金大中が単独候補となる代わりに、キム・ジョンピルには首相任命と内閣編成権を保証することで手を結んだ。
この連合は、「保守体制の清算」と「民主化の象徴」という2人のストーリーが重なり、国民の支持を集めた。さらに、両者の地盤である湖南(ホナム)と忠清(チュンチョン)の票も合わさり、結果として金大中がイ・フェチャン候補を破り、憲政史上初の平和的政権交代が実現された。政権発足後も両者は連立内閣を組み、一本化の合意を履行した。
最近の例は、2022年の第20代大統領選での③「尹錫悦(ユン・ソンニョル)-アン・チョルス」の一本化だ。選挙6日前という土壇場で劇的に実現した。
両陣営は一本化の方式をめぐって対立していたが、最終的にアン・チョルス(国民の党)候補が尹錫悦(国民の力)候補に譲り、共同で大統領職引継ぎ委員会を運営するという条件で合意。これにより、尹錫悦候補は李在明(共に民主党)候補をわずか0.73ポイント差で破ることができた。
一方で、一本化に失敗すれば、敗北につながる。
金大中元大統領は1987年の第13代大統領選で、金泳三(キム・ヨンサム)との一本化失敗により敗北を喫した。当時、6月抗争を経て民主化の流れに乗った「統一民主党」は、④「金泳三-金大中」の一本化を進めたが、金泳三側が譲歩したにもかかわらず、金大中は約束を破って新党を結成し、結果的に3位に終わった。
また、一本化が成功しても、それが勝利を保証するものではない。
2012年の第18代大統領選では、⑤「文在寅(ムン・ジェイン)-アン・チョルス」の一本化が実現したが、うまくいかなかった。両者は「政権交代」を掲げて一本化に合意したものの、ルール設定をめぐって対立。結局、アン・チョルス候補が突然辞退して、文在寅候補に一本化されたが、結果的には朴槿恵(パク・クネ、セヌリ党)候補に敗れた。
さらに現在の「国民の力」は、8年前と同様に「弾劾」の影を抱えたまま選挙を迎えている。2017年5月に朴槿恵元大統領の罷免によって、急きょ行われた第19代大統領選では、保守陣営が候補一本化に失敗し、文在寅(共に民主党)候補に圧倒的な差で敗れた。
現在の「国民の力」も、2つの大きなハンディキャップを抱えたまま選挙に臨んでいる。
第一に、「弾劾された大統領を出した与党」として責任を十分に果たせず、「弾劾の川」を越えられていない。第二に、対立陣営では李在明候補という強固な求心力のもとで一枚岩の態勢が形成されているのに対し、「国民の力」は危機の中でもキム・ムンス、ハン・ドクス両候補のみならず、改革新党のイ・ジュンソク候補までもが一本化の動きに距離を置いている状況だ。
専門家たちは、汎保守勢力のビッグテント一本化が実現しなければ、李在明候補に勝つのは事実上不可能だと口をそろえる。
政治評論家のパク・サンビョン氏は「一本化がうまくいけば、保守支持層をまとめるきっかけになるだろうが、むしろ内輪揉めが激化すれば陣営自体が崩壊しかねない」と警告。政治評論家のチャン・ソンチョル氏は、「李在明候補があまりにも強いため、仮に一本化が実現しても選挙の流れを左右するほどの効果はないだろう」と分析している。
一部では、そもそも一本化の実現自体が難しいとの見方も出ている。明知(ミョンジ)大学政治外交学科のシン・ユル教授は、「一本化が実現すれば多少の変化はあるかもしれないが、実現そのものが簡単ではなさそうだ」と語った。
実際、キム・ムンス候補とハン・ドクス候補は5月7日午後、ソウル鍾路区の某所で一本化協議のために会談したが、合意には至らず物別れに終わったという。ハン・ドクス陣営のイ・ジョンヒョン報道官は会談後、記者団に対し「合意された事項は特にないと候補本人が話していた」と明かした。
(記事提供=時事ジャーナル)
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