甲子園と韓国の“浅からぬ縁”…日本の高校野球への「羨望」と「対抗」と

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“夏の甲子園”が始まった。昨年の第102回全国高校野球選手権は新型コロナの影響で中止となったが、今年は2年ぶりの開催。第103回全国高校野球選手権となるが、“夏の甲子園”はお隣・韓国でも話題に上ることは少なくない。

韓国で甲子園は“カプチャウォン”(甲子園の韓国語読み)の名で広く浸透しており、「日本の高校野球の聖地“甲子園”の熱い夏」(『韓国経済』)、「年間80万人が訪れる日本の甲子園大会、経済効果は3500億ウォン」(『聨合ニュース』)など、複数のメディアが試合結果や日本での盛り上がりについて報じるほどだ。

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スポーツ新聞の『スポーツ京郷』などは韓国プロ野球界の名将とされるキム・ソングン監督による「キム・ソングン、甲子園観戦記」という短期連載まで掲載していたことがある。

それだけ日本の甲子園は韓国でも有名である証といえるが、実は韓国と甲子園には、浅からぬ縁がある。

振り返れば、まだ韓国が日本の統治下にあった戦前には、甲子園の前身大会である全国中等学校野球優勝大会に、当時の朝鮮半島の高校がいくつか参加していた。

そのなかには、日本人との混合チームのみならず、朝鮮人だけで構成されたチームもあった。

それだけに韓国でも甲子園は、“単なる隣国の野球大会”では収まらない特別な存在であるわけだが、興味深いのはかつての名残もあってか韓国でも夏の甲子園と同じ時期に、高校野球の全国大会が開かれている。

鳳凰大旗(ポンファンテギ)全国野球大会がそれで、ここには韓国中の高校野球チームがすべて参加している。高校野球の頂点を決める、まさに“韓国版甲子園”とも呼べる大会だ。 

鳳凰大旗全国野球大会の様子

実際、『韓国日報』は過去の記事で「鳳凰大旗VS甲子園」と見出しを打ち、「8月に開かれる鳳凰大旗は、日本の高校野球における最高のイベントである甲子園に比肩する韓国高校野球の最高大会である」と伝えている。

ただ正直なところ、甲子園と鳳凰大旗は比較にもならない。

日本の甲子園大会は地区予選を含め全国3839の高校が参加したが、鳳凰大旗の参加数は74校。韓国の高校野球部の数は、3桁にも届かないのだ。

それに鳳凰大旗には、甲子園のような“熱さ”はない。

かつては韓国に高校野球ブームが巻き起こった時代もあった。

“春のセンバツ”出場経験もある在日球児たちのチームが、わざわざ韓国まで出向いて鳳凰大旗に出場していた時代もあったほどで、2014年には当時の熱戦の様子が『海峡を越えた野球少年』のタイトルでドキュメンタリー映画にもなっている。

ただ、最近はサッパリだ。

もともと鳳凰大旗は『韓国日報』主催ということもあって、始球式にミス・コリアの受賞者が登場するなど(『韓国日報』はミス・コリアの主催者でもある)、大会を盛り上げるためにさまざまな趣向を凝らした演出が行われてきたが、なかなか盛り上がらない。

その一方で、韓国でも近年、高校野球のあり方がいろいろと議論の的になっている。

韓国では高校生のときに注目された投手が、故障で投げられず、なかなか若手投手が育たず、そのことが近年の韓国プロ野球の「打高投低」現象の要因にもなっていると指摘されている。

そうした状況を打破しようと、2014年から高校生投手酷使対策が導入されているが、それ以外にも問題が多く、決め手を欠いている状態なのだ。

だからこそ韓国が甲子園に向ける視線には、“羨望”の感情も込められているだろうし、また一方では“対抗心”もあるのだろう。

高校野球の盛り上がりでは大きな差が生まれてしまっている日本と韓国だが、実際に両者が対戦したとき、どのような結果が出るだろうか。

ちなみに2012年にソウルで開かれたU-18世界野球選手権大会では、当時高校生だった日本ハムの大谷翔平らが2度にわたって韓国と対戦し、1勝1敗の熱戦を繰り広げている。

(文=慎 武宏)

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