日本よりも先に値上げや“店内全面禁煙”をはじめた韓国「タバコ事情」

2021年10月10日 社会
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年々低下してしている日本の喫煙者率。

日本たばこ産業(JT)が1965年から2018年まで続けてきた「全国たばこ喫煙率調査」によると、1966年は男性83.7%・女性18.0%(ともに成人)の喫煙率だったが、2018年の最後の調査では喫煙率が男性27.8%・女性8.7%まで低下したという。

では日本に先んじて、タバコの“値上げリレー”や全面禁煙が実施されている韓国の喫煙率はどのくらいなのだろうか。

韓国では今やほとんどの飲食店で禁煙・分煙・全面禁煙などの処置がとられており、2015年からすべての飲食店で喫煙が禁止されている。タバコの大幅値上げも行われており、警察沙汰の事件も起こったほどだった。

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ならば、喫煙率はどうか。韓国の保健福祉部(部は日本の省に相当)が「OECD保健統計(Health Statistics)2018」を分析した結果によると、18.4%(2016年基準)。日本よりも0.5ポイントと若干高い数字だった。

男女別で見ると、男性は日本27.8%、韓国32.9%と5ポイント近くも高い。逆に女性は、日本8.7%、韓国4.1%で日本が倍以上という結果だった。

写真はイメージであり本文とは関係ありません(写真提供=SPORTS KOREA)

ただ、韓国女性の喫煙率の数字は怪しいとの指摘がある。2018年の韓国保健福祉部「国民健康栄養調査」では6.4%と発表されていたし、「女性喫煙率6.4%?…“実際は17.3%に上るだろう”」(『聨合ニュース』)といった分析もあった。

また、2018年7月1日から段階的な禁煙となってしまった“スモーキング・カフェ”に訪れる客の7割が女性という証言もあった。

強烈過ぎる警告画像をさらに大きく?
それでも韓国の喫煙率は、「OECD平均よりも0.1%低い」(『ニュース1』)とのこと。

20年前の1998年当時は喫煙率が66.3%だっただけに、いかに韓国でタバコ離れが加速したかがわかるだろう。記者仲間や芸能関係者など、筆者の周辺でもここ数年の間でタバコをやめた人たちがとても多くなっている。

特筆すべきことは、こうした状況の中で韓国政府は喫煙率をさらに下げようと本腰を入れていることだ。

例えば、タバコの箱に掲載されている注意文と警告画像である。

韓国で発売されているタバコの箱には、すでにその半分のスペースに注意文と警告画像が掲載されている。

喫煙で発症可能性が高いとされる肺がんをはじめとする患者の写真なのだが、この写真を見ると思わずタバコ購入を躊躇しそうなレベルである。

韓国保健福祉部は、その警告画像と注意文の面積を現在の50%から70%に増やそうとしているというのだから、かなり本気だ。強烈なショック療法で喫煙のデメリットを訴え、禁煙ムードをさらに高めようとしている。

実際、警告画像の効果は高いようで、カナダの研究結果によると、喫煙者になる確率が12.5%下がり、喫煙者が禁煙しようとする可能性を33%も増加させたとも報じられていた。

何よりも「喫煙警告画像導入後、タバコの販売量が減少」(『ソウル経済』)といった記事があるように、警告画像が本格的に導入されてから韓国ではタバコの販売量が下がっている。

社会全体的に禁煙の流れに向かう日本でも今後、導入される可能性があるのではないだろうか。

加熱式タバコが人気。販売量は2倍に

しかしその一方で、韓国でも加熱式タバコの需要が伸びている。

韓国企画財政部が2018年7月17日に明かしたところによれば、上半期のタバコ販売量は前年同時期比1.6%減少した16億8400万箱。そのうちアイコス(IQOS)などの加熱式タバコの販売量は1億5600万箱で、10%に肉薄している。

日本から遅れて韓国でも加熱式タバコが2017年5月頃から販売されているが、2017年下半期の販売量は7900万箱だった。つまりわずか半年足らずで販売量が倍増している計算になる。

発売当初から長蛇の列ができて、トラブルまで起きたと聞いていたが、実際に紙タバコから切り替える人が多い。

いずれにしても厳しい政府の対応によって、韓国では喫煙率が年々下がっている。日本も韓国と同じように減少が続くのか、注目してみたい。

文=慎 武宏

*この原稿はヤフーニュース個人に掲載した記事を加筆・修正したものです。
 

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