韓国は世界で最も低い合計特殊出生率を記録している国だ。
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多くの人が少子化の理由について様々な要因を挙げる。少子化が初めて問題視された2000年代初頭には、代表的な原因として「劣悪な保育環境」が挙げられた。共働きが増加しているにもかかわらず、適切な保育環境が提供されないために出産を諦めるという論理だった。
これにより、一定規模以上の企業には自社内保育施設の確保が義務づけられ、育児休暇や各種支援制度も数えきれないほど増加した。
しかし、出生率はさらに低下した。
2010年代後半には、高い住宅価格が少子化の原因とされた。マンション生活に慣れた世代が結婚後にマンションに入居するには経済的なハードルが高すぎるため、出産を諦めるという論理だ。これに伴い、新婚夫婦向けの優先住宅供給政策や、子供のいる家庭には低金利での融資制度まで導入されたが、それでも出生率は下がり続けた。
ついには「韓国は住みづらい国なので出産を諦める」という主張まで提起された。韓国責任論と呼べるような主張も広がった。
しかし、視野を広げると少子化は世界的な現象といえる。1300年代のペストによる人口減少以来となる地球規模で人口減少が現れているのだ。
ペスト流行後、世界人口は20倍に増加し、20世紀には4倍に膨れ上がったことを思えば、人口減少は理解しがたい現象だ。世界的な少子化と人口減少の原因は、子供を望む欲求の減少にある。多くの研究機関や専門家がその原因を究明しようと様々な調査を行ってきたが、結論としては「人々の意識が変わったため」という方向に収束しつつある。
実際には人口減少の前に、出生率の低下が先に起こっていた。1960年代の人口爆発以降、世界の出生率は急激に低下し、2015年の全世界出生率は1965年の半分にまで減少した。
女性1人当たりの出生率が2.1で人口が維持される基準となるが、世界の多くの地域でこの基準を下回っている。東アジアでは2022年に韓国、日本、中国、台湾で人口減少が見られた。
東南アジアでも2018年以降、2.1以下の出生率を記録しており、人口世界第4位のインドネシアでも2022年から2.1以下に減少した。フィリピン、ミャンマー、タイも同様であり、南アジアのインド、ネパール、スリランカも2.1以下の出生率を記録している。都市部ではさらに顕著で、インドのコルカタでは2021年の合計特殊出生率が1.0となった。
ラテンアメリカとカリブ海地域でも出生率は急落している。キューバとチリは1.1を記録し、メキシコシティなどの大都市では1.0未満にまで低下している。イスラムの影響により少子化を回避すると思われていた中東、北アフリカも同様の傾向だ。トルコのイスタンブールは1.2以下、イランも同様の状況が続いている。
少子化の「元祖」とされるヨーロッパでは、2023年に370万人の子供が生まれたが、これは1964年の680万人と比べてほぼ半減している。大多数のヨーロッパ諸国が歴史的に最低水準の出生数を記録しており、福祉政策が整った北欧諸国でも出生率は急落している。
先進国の中で比較的高い出生率(1.6)を維持するアメリカも、徐々に出生率が低下している。大量の移民が流入しているため急激な人口減少は見られないが、アメリカもいずれ人口減少に直面するだろう。
人口が増加している唯一の地域は、サハラ以南のアフリカだ。この地域の人口は12億人で、現在の合計特殊出生率は4.3だ。2100年には世界人口の半分がアフリカに居住するという予測が出されている。しかしこの出生率も1970年代後半の6.8と比べるとかなり低下しており、その減少速度は急である。
一般的に出生率の低下は、経済発展と女性の社会進出拡大の結果と認識されている。つまり、先進国は出生率が低く、発展途上国は出生率が高いとされる。しかし上記のように少子化傾向は、所得水準に関係なく世界的に見られる。貧困国であるネパールやミャンマーでも2.0以下の出生率を記録しているのが代表例だ。
世界的に共通する現象の一つは「結婚回避」だ。自分が重要で、自分の人生を生きることが重要であるため、出産や育児に時間と費用をかけたくないのだ。
「結婚-出産-育児」は当然とされてきたが、今や女性にとって「人生を台無しにするリスク」として考えられており、それを避けることが賢明とされている。
周囲に子供を産まず、結婚をしない人が増え、社会的な学習の機会が減少していることも原因とされる。子供が生まれ育つ姿を目にする機会が減るほど、結婚と出産はさらに急速に減少していく。結局のところ、少子化は多少の時間差こそあれ、世界的に共通する現象であり、これまでに知られる政策的な手段ではそれを阻止できないことが明らかになりつつある。
高齢化と人口減少が克服すべき課題でないとすれば、我々の課題は人口減少の時代に適応することだ。人口が持続的に増加することを前提とした年金制度は廃止されるべきで、経済成長も当然のものではなくなるだろう。
数々の試行錯誤と葛藤を経て、世界は少ない人員でより多くの仕事を行う体制に再編されるだろう。限られた人口をより良く教育し、教育を受けた人々が高い付加価値を生み出す社会が生き残るだろう。当然ながら人口不足を補うため移民の受け入れはさらに拡大し、移民を速やかに同化させることのできる国が優位に立つのは明らかだ。
世界で最も急速な高齢化と少子化を経験し、まもなく急速な人口減少に直面する韓国に必要なのは、自己否定と自責を止め、社会・経済システムを再編することだ。変化する状況に適応できれば、韓国の経験は他地域にも応用可能であり、その過程で新たな機会がもたらされるだろう。
過去の記憶を捨て、現実に集中する時が来ている。問題の原因や責任者を探している間にも時間は過ぎていく。他者が通らなかった道を先んじて歩き、道を切り開く使命が韓国にあるのだ。
(記事提供=時事ジャーナル)
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