韓国人は東京五輪でどんな種目に熱狂し、どんな感想を抱いていたのだろうか。韓国の東京五輪を物語る上で参考になる、ひとつのデータが明らかになった。
発表されたのは世論調査で有名なギャラップ・コリアの調査結果である。
ギャラップ・コリアは8月10日から12日まで韓国全国の満18歳以上1002人を対象に、東京五輪に関する電話調査を実施したのが、その回答が興味深い。
例えば「もっとも印象的な活躍を見せた選手は?」という設問では、女子バレーボールのキム・ヨンギョンが1位だった。回答者の63%がキム・ヨンギョンの名を挙げたという。
キム・ヨンギョンに関しては大会期間中だけではなく、帰国後も話題集中。帰国時の会見から彼女が大会中に食べた食事まで、さまざまなことが話題になっている。
このキム・ヨンギョンのあとに続いたのはアーチェリーのアン・サン(35%)、キム・ジェドク(13%)、男子走り高跳びのウ・サンヒョク(11%)、水泳・男子自由形100m・200mのファン・ソンウ(7%)、韓国女子体操初のメダリストとなったヨ・ソジョン(6%)だった。
「もっとも興味深く観た種目は?」という設問でも、女子バレーが1位(68%)。あとを続いたのはアーチェリー(44%)、フェンシング(9%)で、メダルが期待された野球(8%)や男子サッカー(7%)は低かった。
ちなみに大会前に行われた「関心がある種目ベスト10」では、男子サッカー(40%)、野球(20%)、アーチェリー(16%)、陸上競技、水泳、テコンドー(いずれも4%)、射撃(3%)、フェンシング、柔道(いずれも2%)の順だった。
サッカーと野球は韓国人の期待を裏切ったわけだが、そんなこともあって「五輪があって生活は楽しかったか」という問いに対する答えも、あまり明るくはない。
「とても楽しかった」と答えたのは53%。「そうではなかった」が37%だったという。「どちらでもない」は10%だった。
これだけ見ると、「楽しかった」のほうがだいぶ多いように見えるが、ギャラップリアによる過去の調査では、リオデジャネイロ五輪では55%、ソチ五輪では67%、ロンドン五輪では84%、バンクーバー五輪では89%が、「五輪があって生活が楽しかった」と答えていたのだ。
ただ、韓国が東京五輪で手にしたメダルは金6、銀4、銅10の総合順位16位。「金メダル7個以上を獲得して3大会連続して総合10位以内入り」という目標は達成できなかった。
総合トップ10入りを逃したのは2000年シドニー五輪以来。金メダルの少なさは1984年ロサンゼルス五輪以来でもある。
まさに近年の五輪でもっとも低迷した大会でもあるわけだが、それでも半数以上の53%が「とても楽しかった」と答えたところに、韓国の変化を感じずにはいられない。
かつて韓国では「10個の銀メダルよりも1つの金メダルのほうが価値がある」と言われるほどメダル至上主義であったが、今回の東京五輪ではメダル獲得ばかり気を取られて熱狂したわけでなかった。
実際、今回の東京五輪の成績を「期待以下」としたのは31%で、残りは「期待以上」(25%)、「期待通りの結果」(31%)「どちらでもない」(13%)だった。
ギャラップ・コリアによると、「期待以上」という回答は男性(20%)よりも女性(30%)に多く、年代別でも20代(37%)などが相対的に多かったという。
女子バレーや男子走り高跳びなどが「メダルよりも価値ある4位」と報じられ、「感動の4位」という特集企画が各種メデイアで組まれているほどだ。
もちろん、野球のように「恥ずかしい4位」と酷評されている種目もあるが、もしかしたら東京五輪は韓国人のスポーツ観や五輪観に変化があった大会として記憶されるかもしれない。
文=慎 武宏
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