「即ツーアウトは免れた」“次期大統領”の呼び声高い韓国最大野党代表、2つ目の裁判は無罪も…前途多難のワケ

2024年11月25日 政治 #時事ジャーナル
このエントリーをはてなブックマークに追加

「2アウト」の危機に追い込まれていた韓国最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表が、起死回生を果たした。

【注目】“司法リスク”で転落する次期大統領候補

公職選挙法違反の1審判決で執行猶予付きの懲役刑を言い渡されたイ代表だが、偽証教唆事件の1審判決では無罪を言い渡された。これによりイ代表を取り巻く危機論は、一部沈静化するものと見られる。

ただし、「大庄洞(テジャンドン)開発不正」「北朝鮮への送金」など、残る1審裁判は複数あり、公職選挙法違反の控訴審も控えている。共に民主党が「法律事務所」のように動くなか、当分の間、国会と裁判所の最大の関心事は引き続き「イ・ジェミョンの司法リスク」となりそうだ。

「偽証教唆ではない」…裁判所は無罪判決

11月25日、イ・ジェミョン代表が偽証教唆事件の1審判決公判で無罪を言い渡された。2023年10月に在宅起訴されてから1年1カ月が経過してのことだ。

ソウル中央地裁・刑事合議33部(キム・ドンヒョン裁判長)は同日14時、イ代表に対する宣告公判を開き、「被告イ・ジェミョンが一方的な主張を繰り返し、自分に都合の良い証言について言及する通話内容を、偽証を求める会話と解釈するのは難しい」と判断した。さらに「被告キム・ジンソンの各証言を見ても、被告イ・ジェミョンが偽証を教唆したとは言えない」とした。

11月25日、ソウル中央地裁の近くに集結したイ・ジェミョン支持者たち
(写真=時事ジャーナル)11月25日、ソウル中央地裁の近くに集結したイ・ジェミョン支持者たち

昨年9月、当時の中央地裁のユ・チャンフン令状専担部長判事が、イ代表に対して請求された逮捕状を棄却しつつも、偽証教唆容疑について「証明されたと見える」と述べたことがあり、この事件はイ代表が関与する事件のなかで最も有罪の可能性が高いと予測されていた。

しかし、この日の偽証教唆事件で劇的に無罪判決を受けたことで、イ代表は一息つくことができた。もし選挙法違反の1審に続いて偽証教唆容疑でも有罪が認められていたならば、司法リスクによる政治的負担がさらに増すことは避けられなかっただろう。

イ代表は偽証教唆事件の1審判決後、「真実と正義を取り戻してくれた裁判部に感謝する」と述べ、「これから国民のより良い生活のために最善を尽くす」と話した。また、国会に向けて「人を殺す政治ではなく、人を生かす政治をしよう」と付け加えた。

この日、法廷を訪れた共に民主党の議員やイ代表の支持者の一部は、安堵の涙を流しながら「イ・ジェミョン無罪」「大統領イ・ジェミョン」と繰り返し叫んだ。

イ・ジェミョン代表が2度目の危機を乗り越えたことで、共に民主党も反撃の機会を得た。

これまでイ代表を狙って「無理な起訴」に踏み切ったとして検察を批判していた論理が、今回の司法部の判決によって説得力を増す形となった。親イ・ジェミョン派を中心とする「イ・ジェミョン断固支持」の姿勢もさらに強固になると見られる。

同時に、共に民主党は法律事務所のように動き始めた。同党は公職選挙法違反事件に関連し、イ代表の弁護団を直接構成する案を検討中だ。党の人的・物的資源をすべて投入してでも、イ代表の無罪を勝ち取る覚悟といえるだろう。街頭や広場に出て、ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権を糾弾する場外集会も、引き続き展開する計画だ。

前途多難…公職選挙法違反の控訴審も鍵に

11月25日、裁判所に向かうイ・ジェミョン代表
(写真=共同取材団)11月25日、裁判所に向かうイ・ジェミョン代表

しかし、イ代表を取り巻く危機論は「これからが始まりだ」という見方もある。今後続く裁判が負担となる。

イ代表が現在、直面している裁判と検察の捜査は、△大統領選挙における虚偽発言(公職選挙法違反)、△大庄洞・白峴洞(ペクヒョンドン)開発不正および城南FC違法寄付金、△検事詐称の偽証教唆、△北朝鮮への送金、△京畿道の法人カードの私的流用の5件だ。

これらのうち、1件でも最高裁判所で罰金100万ウォン(約11万円)以上の刑が確定した場合、イ代表は国会議員の資格を失い、大統領選への出馬が頓挫する。同時に、共に民主党は434億ウォン(約47億8800万円)の選挙補助金を返還しなければならない。

すでに1審裁判で有罪が言い渡された公職選挙法違反を覆せるかどうかが、イ代表の政治生命を左右する重大な分岐点になる見通しだ。

同事件で1審裁判所は「選挙過程で有権者が正しい選択をできないようにし、民意を歪曲した」として懲役1年、執行猶予2年を言い渡した。イ代表は控訴しており、近く2回目の判断が下される見通しだ。公職選挙法の裁判は、1審が6カ月、控訴審・上告審がそれぞれ3カ月以内に終わらなければならない。

現在まで「1勝1敗」を記録しているイ代表が、今後の裁判でどれだけの勝率を上げるかによって、政治界の雰囲気は大きく揺れるだろう。残る1審や控訴審で連勝を記録すれば、「イ・ジェミョン大勢論」はさらに強固になると見られる。

一方で敗北が重なれば、野党の一部で「イ・ジェミョン体制に代わるプランBが必要だ」という主張に火がつく可能性が高い。

光云(クァンウン)大学のチン・ジュングォン特任教授は11月19日、YouTubeチャンネル『時事ジャーナルTV』に出演し、「イ代表の裁判が4件から5件に増えることになったが、今後も公職選挙法違反の1審判決のような打撃が続かざるを得ない」と述べ、「イ代表が失脚する状況になれば、親イ・ジェミョン派の中から誰かを立てて座らせる可能性が高く、“忠誠心競争”が行われるが、中道層には相当な反感を与えるだろう」と分析した。

政治評論家のパク・サンビョン氏は「民主党内でイ代表に対する断固支持の流れが目立つが、鍵を握るのは世論だ」とし、「イ代表が重刑を言い渡され、民心がイ代表への支持を撤回すれば、党も変わらざるを得ない。『“ポスト”イ・ジェミョン』を探す動きが起こるだろう」と予測した。

(記事提供=時事ジャーナル)

【画像】「最悪の場面」G20で警備員と韓国随行員が揉み合うシーンが生中継…ユン大統領の驚く姿も

「軍事秘密」を中国や市民団体に漏らしていた?文在寅政権、4年前の“THAAD輸送作戦”で何が

韓国の海軍艦艇に「ロシアの技術」が使われている…重要情報を抜き取られる可能性はないのか

前へ

1 / 1

次へ

RELATION関連記事

デイリーランキングRANKING

世論調査Public Opinion

注目リサーチFeatured Research