旋風を巻き起こしたテスラが第3位に浮上し、中国BYDも進出…停滞する韓国の電気自動車市場に革命を起こすか

2025年01月12日 経済 #時事ジャーナル
このエントリーをはてなブックマークに追加

テスラは昨年、韓国での輸入車市場で第3位を獲得して旋風を巻き起こした。

【注目】日本で韓国ヒョンデと中国BYD、明暗くっきり

韓国内の電気自動車市場がキャズム(一時的な需要停滞)や火災による「フォビア(恐怖症)」の影響で縮小するなか、テスラだけが成長を遂げ、電気自動車の可能性を示した。

テスラの人気を牽引した要因は「価格」だ。昨年、テスラは手頃な価格のモデルYとモデル3のRWD(後輪駆動)を発売し、販売量を大きく伸ばした。価格が下がったことで参入障壁が低くなり、それが販売増加につながった。

2025年は電気自動車市場がさらに活気づく見込みであり、電気自動車のリーダー企業であるテスラに加え、KIA(起亜)も手頃な価格帯のモデルを投入する予定だ。さらに、中国最大の電気自動車メーカーであるBYDも国内市場に進出し、電気自動車の大衆化時代が本格的に始まると予想される。

テスラ、「輸入車トップ3」の座を確保

2024年、テスラコリアは約3万台を販売し、過去最高の記録を達成した。

韓国輸入自動車協会によると、テスラコリアの昨年の販売台数は2万9750台で、BMWコリア(7万3754台)、メルセデス・ベンツコリア(6万6400台)に次ぐ第3位となった。4位のボルボコリア(1万5051台)の販売量を2倍近く上回った。

モデル3
(画像=テスラ公式HP)モデル3

これまで販売台数が2万台を超えることがなかったテスラは、昨年の電気自動車市場のキャズムにも関わらず、大幅な成長を遂げた。自動車市場調査機関CARISYOUデータ研究所によると、2024年の国内電気自動車販売台数は14万6883台で、前年比9.7%減少している。

テスラの成功の背景には、モデル3とモデルY RWDの影響が大きい。これらの車両は価格が5000万ウォン(約540万円)台前半で販売され、高い人気を博した。また、コロナ禍で原材料価格が高騰し価格が上昇していたロングレンジモデルも、昨年から価格が正常化し、成長を後押しした。

今年、テスラはモデルYの部分変更版(ジュニパー)と新型のモデルQ(仮称)を発売する計画だ。モデルYジュニパーは中国・上海工場で生産され、コスト削減を通じて価格が引き下げられると予想される。モデルQはテスラの新しい低価格車種で、価格は約3万ドル(約470万円)台になると見られている。

具体的な情報はまだ公開されていないが、車両の全長は4m未満の小型ハッチバックスタイルで、リン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを搭載し、1回の充電で500km走行できると推定されている。

イーロン・マスクCEOは昨年第3四半期のカンファレンスコールで、「2025年上半期に低価格車を発売する計画に変更はない」と述べ、モデルQの投入を改めて強調した。マスクCEOは、今年のテスラ販売台数が昨年比で20~30%増加すると見込んでおり、この見通しにはモデルQの成功が反映されていると考えられる。

モデルY
(画像=テスラ公式HP)モデルY

世界の電気自動車市場をリードし、韓国でも最も人気のあるテスラが、本格的に価格を引き下げた電気自動車を発売することで、市場全体の規模が拡大すると予想されている。業界では現在、電気自動車市場におけるテスラのシェアが大きい状態だが、長期的にはテスラを中心とした電気自動車の大衆化により、他の自動車メーカーにもチャンスが広がると見ている。

特に今年、テスラに続き、KIAも価格を引き下げた電気自動車ラインナップを追加し、電気自動車の普及を加速させる方針だ。

KIAは昨年発売したEV3に続き、今年EV4とEV5を投入する計画。これまでKIAはEV6やEV9など中型以上の電気自動車を中心に販売してきたが、2024年のEV3を皮切りに、今年はEV4とEV5を通じて本格的に電気自動車の大衆化を推進する。EV4はセダン、EV5は準中型SUVとして2023年のEVデイで公開されている。

KIA自動車のソン・ホソン社長は今年の電気自動車販売目標について、「EV3の国内年間販売台数が約3万台なので、EV4とEV5もそれぞれ同程度の販売を想定している」と述べた。また、「世界的にはモデルごとに10万台を国内で生産する計画だ」と明らかにしている。

中国BYD、電気自動車市場の「革命児」か

テスラやKIAと並び、2025年の国内電気自動車市場で注目されるもう一つの話題は、中国のBYDだろう。BYDは今年1月に韓国でブランドを立ち上げ、販売を開始する計画だ。

上から「ATTO 3」「DOLPHIN」「SEAL」
(写真=BYD公式HP)上から「ATTO 3」「DOLPHIN」「SEAL」

BYDは国内では馴染みの薄いブランドだが、中国では最高の販売実績を誇る電気自動車メーカーといえる。2024年、BYDの電気自動車販売台数は約176万台で、前年と比べ約12%成長した。世界1位のテスラ(約179万台)との販売差も、2023年の24万台から2024年は約3万台にまで縮まった。

BYDは今年、ブランド立ち上げと共に全国の主要拠点に15の展示場およびサービスセンターを設置し、積極的な投資を予告している。まだ具体的な発売車両については公表されていないが、業界では「ATTO 3」「SEAL」「DOLPHIN」といった3000万ウォン(約320万円)台の車両が発売される可能性が高いと見られている。

この3車種については、すでに国内で商標登録を出願しており、環境部などの政府機関で認証手続きを進めている。BYDは今後、毎年1車種以上の新車を国内に投入し、ブランドの存在感を高めていく構想だ。

しかし、BYDの韓国市場での成功可能性については業界内で意見が分かれている。

成功に懐疑的な立場は、中国製品に対する韓国消費者の不信感が根強い点を挙げている。長年、低品質の中国製品で苦しんできた韓国の消費者は、中国製を購入しないだろうという意見だ。

特に自動車は品質問題が命に直結するため、中国製を避けるという指摘が多い。また、韓国は世界最高水準の自動車ブランドである現代自動車グループの本拠地であり、わざわざ中国製を選ぶ理由がないとする声もある。

一方で、最終的には低価格の中国製品による攻勢を避けるのは難しいという見方もある。自動車価格が上昇し続け、消費者の負担が増えているなかで、生産コストの低さを武器に価格を抑え、商品競争力を高めた中国製が市場シェアを拡大するのは時間の問題だという意見だ。

業界関係者は、「初期段階では不信感から中国製が市場に定着しにくいだろうが、アーリーアダプター(早期導入者)を中心に口コミが広がり始めれば、最終的には中国製車両が増えていくだろう」と述べた。

(記事提供=時事ジャーナル)

日本の輸入電気自動車市場に参入した韓国ヒョンデと中国BYD、明暗くっきり

日本を「地獄」と叩いた韓国歌手、日本公演へ…その“二枚舌”を意外な人物が痛烈批判

日本ビールと中国ビール、韓国で明暗…「ノー・ジャパン」運動と“放尿ビール”事件を経て

前へ

1 / 1

次へ

RELATION関連記事

デイリーランキングRANKING

世論調査Public Opinion

注目リサーチFeatured Research