与党の有力な大統領候補として評価されるホン・ジュンピョ大邱(テグ)市長が「大統領弾劾は棄却され、職務に復帰すべきだというのが私の立場だ。しかし万が一、早期大統領選挙が実施された場合を党として準備しないわけにはいかない」と述べ、次期権力者の条件として「第7共和国を開ける人物」を挙げた。
ホン市長は「第6共和国の40年は『民主化』と『平和的な政権交代』によってその役割を終えた」とし、「第7共和国を築き、新しい大韓民国の未来、その100年の準備を始めなければならない。だからこそ、次の政権は必ず左右の対立を解消し、先進大国時代を開かなければならない」と強調した。
そして、「陣営論理を克服し左右を統合できる政治家」と「大統領選で最大野党『共に民主党』の李在明(イ・ジェミョン)候補に勝てる人物」は、自分しかいないと自信を示した。
ホン市長は、2月4日に大邱市庁の市長接見室で行われた、本サイト提携メディア『時事ジャーナル』との単独インタビューで、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の非常戒厳令宣言から現在に至るまでの状況、今後の展望について、自らの立場と信念を詳しく語った。
◇
―SNSで継続的にメッセージを発信している。最近、それらをまとめた『政治がどうしてこうなのか』(原題)というタイトルの本も出版した。
『政治がどうしてこうなのか』が第1巻で、第2巻として『夢は叶う』というタイトルで2月中に出版される。これはすべて政治日記だ。中学校の頃から日記を書いてきたし、政治の世界に入ってからは、毎日韓国で起こる主要な懸案について分析し、自分の意見を持つ必要があると思い、フェイスブックに文を投稿してきた。
他の人がするように、誰かに代筆させることはなく、自分で直接書いている。10分もかからない。そうしているうちに、現実を正確に認識する洞察力が養われ、未来を見通す予知力も生まれる。本を読めば、20~30年にわたる韓国政治の全体像が見えてくるだろう。
―論争を恐れてメッセージの発信をためらう政治家もいるが。
文を書けば、常に賛否両論がある。それについては気にしない。懸案に対して自分の立場を整理しながら一歩一歩進んでいかなければならないのに、自分の意見もなくどうやって前に進めるというのか。
―現在の政局では、昨年12月3日の非常戒厳が中心的な話題となっている。当時、非常戒厳について「軽率な真夜中のハプニング」と評したが。
発表された内容をすべて聞いて最初に思ったのは、「あれが非常戒厳の理由になるのか」ということだった。非常戒厳は、戦時・事変またはそれに準じる国家非常事態の際に発動できるものではないのか。
次に考えたのは、「国会が在籍議員の過半数で解除要求をすれば、結局意味のないものになるが、それを阻止できるのか」ということだった。
全国の地方自治体の首長たちが一斉に非常会議を招集するというので、私は「待ってみろ。明日の朝には収拾がつくかもしれない」と言った。案の定、深夜0時過ぎに国会で解除要求が出され、そのまま寝た。だから翌朝にハプニングだったと言ったのだ。
しかし、まさか野党が突然これを内乱罪のフレームに仕立て、国民を扇動するとは思わなかった。
―内乱罪には当たらないと考える理由は?
尹大統領が政治的に解決すべき問題を非常戒厳で解決しようとしたのは、非常に不適切だったと思う。しかし、戒厳は憲法の枠内にある大統領の非常大権だ。その権限を行使したが、国会が解除を要求し、すぐに解除されたので、そこで事態は終息した。
内乱罪が成立するには、政権奪取の目的がなければならない。しかし、すでに政権を握っている者に、そんな目的があるはずがない。また、本当に国会を無力化しようとしたのであれば、国会が解除要求権を行使できたはずがない。世界のどこに、内乱罪を生中継する国があるだろうか。これは“暴動”の概念ではない。
職権乱用罪には該当する可能性があるとは思った。それでなくても、弾劾の口実を見つけられずに必死になっていた野党が、職権乱用罪で攻めてくるだろうと考え、非常戒厳の翌日、「事態の収拾をしっかりしてください」と言ったのだ。
ところが、野党が過剰に反応し、内乱罪のフレームを作って一方的に押し付け、与党内でも混乱が生じ、何人かの反逆者がその罠にはまってしまった。
―現職大統領の逮捕に続き、拘束されるという前代未聞の事態に発展した。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領の時代に、「検察捜査権完全廃止法」を制定し、捜査権の調整が行われたことで、内乱罪の捜査は警察だけが担当できるようになった。高位公職者犯罪捜査処や検察には、内乱罪の捜査権がない。
それほどまでに制限されているため、高位公職者犯罪捜査処から事件を引き継いだ検察が追加捜査をしようとして拘束期間の延長を申請したが、裁判官がこれを棄却したのも無理はない。捜査権がないのに、どうして拘束期間の延長が認められるだろうか。
―検察は尹大統領を拘束・起訴した。今後の裁判はどのように見通しているか。
釈放して、不拘束のまま補完捜査を行えばよかったのに、検察がいきなり起訴してしまった。死刑・無期刑に相当する重罪を、検察が捜査もせずに起訴したということだ。今後の裁判過程での立証は非常に難しくなるだろう。
捜査権を持たない高位公職者犯罪捜査処が作成したすべての証拠書類は無効だ。警察が一部作成した書類が効力を持つかもしれないが、法廷で被告人が否認すれば、捜査書類はただの紙くずになる。今後、証拠となるのは法廷での証言と陳述だけになる。(内乱罪の成立は)簡単ではないだろう。
―尹大統領の弾劾について、左派の「集団的狂気」だと指摘した。
集団的狂気は「Collective Madness」という社会学の用語だ。社会全体が理性的な判断力を失い、ある特定のテーマに対して集団的に盲従する状態を指す。
朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾の時が代表的な例だ。弾劾の理由にならないにもかかわらず、集団的狂気によって彼女を悪魔のように仕立て上げ、追放してしまった。
尹大統領に対して内乱罪のフレームをかぶせるのも、まったく同じ形態だと見ている。内乱罪に結びつけることで、国民全体を興奮させ、集団的狂気へと誘導しようとしているのだ。だからこそ私は、集団的狂気に言及して「冷静に見よう。これは本当に大統領が拘束されるべき理由だったのか」と指摘した。
内乱罪という無理なフレームを押しつけて、このような事態にすることが、はたして国の品格を高めることになるのか。韓国は、南米の独裁国家のように世界に報じられてしまったのだ。
―尹大統領の弾劾審判を担当している憲法裁判所の偏向性の議論と、マ・ウンヒョク裁判官候補者の任命問題についてどう見ているか。
人々は憲法裁判所の機能を誤解している。韓国の憲法裁判所は、本質的に政治的な司法機関だ。
構成を見れば、大統領が3人、国会が3人、裁判所が3人を推薦することになっている。各機関に推薦権を与えた形であり、国会推薦枠は、与党1人、野党1人、そしてもう1人は与野党が合意して中立的な人物を推薦するのが慣例だった。
そうやって9人が集まり、政治的な合意を形成するというのが本来の趣旨だ。憲法裁判所は、大法院(最高裁)のような純粋な司法機関ではない。憲法裁判所が偏向しているかどうかを議論すること自体がナンセンスだ。
しかし、マ・ウンヒョク裁判官候補者の任命問題については、憲法上の慣例を無視し、中立的な人物ではない者を推薦した「共に民主党」が間違っている。「共に民主党」が推薦を取り消し、与野党が改めて集まり、第3の中立的な人物を合意するのが憲法精神に適っている。
憲法裁判所が当事者でありながら、自分たちで裁判をして任命を強要するのはコメディだ。これは与野党が合意して解決すべき問題だ。
―尹大統領が現在の危機を招いた最大の原因は何だったのか。
2年ほど前、ユ・シミン前長官とMBCの『100分討論』で話したことがある。ユ前長官が尹大統領を激しく非難するのをしばらく聞いた後、私はこう言った。「政治を知らず、検事だけをやってきた人物を大統領に選んだのは国民だ。それなら国民が助けなければならないのであって、ただ非難してばかりではいけないのではないか」と。
尹大統領が過去3年間で最も大きく誤ったのは、“検事のやり方で政治を行った”ことだと思う。
―なぜそう考えるのか。
検事の特性は、相手を認めないことにある。私も検事を11年したが、政治の世界に入ってから、いわゆる“検事の癖”を抜くのに8年もかかった。検事的な思考から抜け出すのに、それほど時間がかかったのだ。
しかし、生涯を検事として過ごしてきた人物が突然、大統領に選ばれたのだから、身についたものが一朝一夕で抜けるはずがない。その結果、李在明代表やチョ・グク元長官の捜査を、本人だけでなく家族まで徹底的に調べ上げる形で行った。やりすぎだった。
サムスン電子のイ・ジェヨン会長も、ヤン・スンテ前大法院長も、無罪判決を受けたではないか。それが尹錫悦やハン・ドンフン前代表が行った捜査のやり方だ。私は検事時代、そんな捜査はしなかった。法にも涙があるものだ。
だから、この3年間は尹大統領と李代表の「蚌鷸(ぼうぎょ)の争い」(共倒れになることのたとえ)の年月だったのだ。
―敵対的共生関係を指しているのか。
もともと「漁夫の利」の前には「蚌鷸の争い」がある。シギとハマグリが互いに噛み合って離さないうちに、漁師が両方とも捕まえてしまうという話だ。この3年間がまさにそうだった。敵対的共生関係によって国を傷つけた3年だった。
もし早期大統領選挙が行われることになれば、国民は決して李在明に投票しないだろう。尹錫悦が退場すれば、李在明も退場する。見ていればわかる。国民が漁師になるのだ。国民は、尹錫悦だけでなく李在明も清算するだろう。国民はバカではない。
―与党の大統領候補として評価されている。「早期大統領選が行われれば、盲目的な政権交代よりも“権力交代”のほうがより心に響くだろう」と発言したが、その意味は?
まず、私の立場としては、大統領弾劾は棄却され、職務復帰すべきだと考えている。しかし、万が一、早期大統領選が行われる場合を党として準備しないわけにはいかない。
朴槿恵元大統領の弾劾のときのように、無防備な状態で対応するわけにはいかないので、我々も備えておく必要がある。
私が「権力交代」を強調した理由は明確だ。これまでの政権交代は、誰が権力者になるかが重要だった。しかし、私は次の権力者は「第7共和国」を開く人物でなければならないと考えている。今回の悲劇的な事態が、大韓民国にとって“禍を転じて福となす”機会となるためには、次に誕生する政権が「第7共和国」の礎を築く政権でなければならないのだ。
―もう少し具体的に説明してほしい。
第6共和国の約40年間は、民主化と平和的な政権交代によってその役割を終えた。次の政権は「左右の対立解消」と「先進大国時代」の準備のために、第7共和国を築く政権でなければならない。そうすることで、大韓民国の未来100年を新たに開くことができる。
故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領以降、左右の対立が激化し始め、およそ20年が経過した。今の韓国社会は、陣営論理(イデオロギー対立)に支配された社会になってしまった。「自分たちの陣営の人間なら泥棒でも構わない。どんな過ちがあっても許される」というような風潮になってしまった。
これを打破するためには、対話と妥協が可能な政治構造を作らなければならない。そのためには新たな憲法を制定し、陣営論理に埋没しない社会を作る必要があるということだ。
―どのような改憲を指しているのか。
例えば、4年再任制、大統領・国務総理制、上・下院二院制などがある。小選挙区制を廃止し、中・大選挙区制へ移行し、比例代表制度も廃止すべきだ。現在の比例代表は、選挙による選出職ではなく、任命職に過ぎないようなものだ。
何よりも、大統領の権限と国会の権限が適切な抑制と均衡を保つようにしなければならない。現在の国会の権限は、あまりにも強すぎる。今回の事態を受けて「大統領制の弊害」という人がいるが、それは理解に苦しむ。大統領が拘束されたのに、一体どこが大統領制の弊害なのか。
むしろ、無慈悲な国会の立法暴力を防ぐための仕組みを作らなければならない。今後100年続く憲法を制定する必要がある。
―改憲のタイムテーブルはどうあるべきか。
次の総選挙(2028年)と同時に改憲の国民投票を行うのが適切だと考える。これまで歴代の大統領は皆、改憲を公約に掲げながらも、就任後は本格的に推進しなかった。それは、改憲を進めるとすべての政治課題がブラックホールのように吸い込まれ、大統領として何もできなくなるという恐れがあったからだ。
しかし、次の大統領は個人的な欲にとらわれてはならない。大統領就任後、1~2年以内に本格的な改憲議論を始め、総選挙の際に国民投票を実施し、その後の大統領選挙を迎えるという順序が最も適切だと考えている。
―自らを「アウトサイダー」と評価し、「アウトサイダーだけが韓国社会の既得権の枠を壊し、真の先進大国時代を切り開ける」と語った。その意味は?
韓国は既得権カルテル(特権層)が動かす社会だ。アメリカも、ドナルド・トランプ大統領が登場する前は同じだった。トランプ大統領はワシントン政界のアウトサイダーだった。私も偶然、保守政党に身を置き、30年以上政治をしてきたが、保守政党の既得権カルテルの範疇に属したことはない。
だからこそ、人々は私を「独孤打(どっこだい)」(一匹狼の意)と呼ぶ。保守主流派の根底にあるのは“貪欲”であり、左派主流派の根底にあるのは“偽善”だ。私は偽善も嫌いだし、貪欲も嫌いだ。
―一部では「ホン・ジュンピョ市長には拡張性がない」と評価する声もあるが。
拡張性という言葉を持ち出して、まるで私を過激な極右のように扱う人々がいるが、本当に滑稽だ。私が拒否しているのは全体主義だ。私は極端な主張はしない。
それに、私を「嶺南(ヨンナム)の政治家」と呼ぶが、私は政治活動の大半を首都圏で行ってきた。20~30代から圧倒的な支持を受けている政治家が、私以外にいるだろうか。
私は政治をしながら常にこう言ってきた。「来る者は拒まず、去る者も引き止めない」と。現在の陣営論理を克服し、左右を統合できるのは、韓国の政治家の中で私しかいないと確信している。
―キム・ムンス雇用労働部長官が各種世論調査で上位に浮上し、競争相手として台頭しているが。
キム長官が注目されるのは悪いことではないと思う。我々の社会には約30%の堅固な保守支持層が存在する。しかし、朴槿恵元大統領弾劾の際、この30%は壊滅的な状態になった。しかし今、キム長官がこの30%を再結集する役割を果たしている。我々の党にとって、キム長官は重要な役割を担っているのだ。
―李在明代表との競争力について自信はあるか。
李代表を打ち負かせる人物は、我が党では私しかいない。李代表の政治は「チンピラ政治」だ。それを捕まえて、壊し、打ち砕き、粉々にできるのは私だけだ。今はこれ以上は言わないことにする。
―李代表には司法リスクがある。「共に民主党」の大統領候補として、別の人物が出る可能性はあるか。
ないと思う。公職選挙法の2審で有罪判決が出ても、李代表が大統領候補になるだろう。なぜなら、彼は図太いからだ。問題は、アメリカと韓国の法制度が異なる点だ。アメリカは英米法体系を採用しており、大法院が裁判を停止させることができる。しかし、韓国は大陸法体系を採用している。
たとえ李代表が大統領になったとしても、裁判は中断されない。大統領には不訴追特権(刑事訴追の免除)はあるが、裁判停止の特権はない。つまり、大統領に就任しても、裁判所から召喚状が届けば出廷しなければならない。さらに、就任後に大法院で有罪判決が確定すれば、即座に補欠選挙が実施されなければならない。
―注目している「共に民主党」の次世代有力候補はいるか。
「共に民主党」の次々期(将来の大統領候補)として最も有力なのは、キム・ドンヨン京畿道(キョンギド)知事だと思う。彼にはしっかりとした経歴があり、人柄も良い。さらに、「共に民主党」らしくなく、政策が過激ではないところも評価できる。
―大統領選本選に出馬する場合、大邱市長職を辞任することになる。過去2年以上の市政で最も誇れる成果は何か。
就任以来、低迷していた大邱を再び立ち上がらせるため、市政全般にわたる100の革新を推進し、「大邱革新100+1」の枠組みを完成させた。すべてが意味のある成果だ。
特に、核心となる「+1」に該当する大邱・慶北(キョンブク)統合は、地方の消滅を防ぎ、未来世代の生存のための不可避な選択だ。大邱・慶北がソウルと並ぶ2大特別市体制を構築し、大韓民国の再飛躍を牽引するという100年の大計だ。
また、大邱慶北統合新空港は、航空物流・旅客の30%以上を担うグローバル先端物流旅客複合空港であり、成長拠点となる。さらに、月光(タルビッ)鉄道と連携し、空と陸の交通網を整備することで、大韓民国に新たな巨大南部経済圏を形成する計画だ。今後も、まだ完了していない政策を1つずつ着実に仕上げていくつもりだ。
大邱の未来繁栄が、先進大国時代の礎であることを胸に刻み、大邱革新を止まることなく推進していく。
(記事提供=時事ジャーナル)
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