2002年3月の党内予備選で支持率2%だった盧武鉉(ノ・ムヒョン)、2020年1月の韓国ギャラップの初調査で支持率1%から出発した尹錫悦(ユン・ソンニョル)が大統領になったように、選挙とは様々な変数によって予想外の結果が出るものだ。
【最新支持率】他の候補全員を合わせても届かない…李在明が断トツ
早期大統領選は期間が短い分、大きな変動が起きにくいかもしれない。しかし、2カ月という期間は、取り組み方によっては2年よりも長く感じられる時間になり得る。
「勝敗が見えている選挙」といわれることもあるが、たとえそれが事実であっても、与党「国民の力」にとっては「うまく負ける」ことで今後の布石につながる。
極端な陣営対立による「51対49」の接戦選挙では、小さな変数でも結果がひっくり返る可能性がある。有権者の15%は投票の1週間前に候補を決める。
前回の大統領選直前に明らかになった「シン・ハクリム、キム・マンベの録音ファイル」も、終盤の世論に大きな影響を与えた。
NBS全国指標調査によれば、今年3月第2週の「政党基準の大統領候補支持率」は、最大野党「共に民主党」候補36%、「国民の力」候補35%と拮抗している。これは、「共に民主党」は安心できず、与党もまだ希望を失う段階ではないことを示している。
李在明(イ・ジェミョン)代表が全体的に有利な地形を持っているとはいえ、致命的な要因も同時に抱えている。
①李在明代表の控訴審判決
大統領選の前に、最高裁で無罪判決が確定しない限り、たとえ控訴審(2審)で無罪になったとしても、選挙期間中ずっと論争が続くことになる。こうした不確実性を伴う論争そのものが、李代表にとって有利な材料とはなり得ない。
もし有罪判決が出れば、最終審に関係なく選挙に大きな影響を及ぼすと予想される。党内外から「出馬辞退論」や「候補交代論」が強く浮上することになるだろう。
「李在明一極体制」のもとでは候補交代は容易ではないが、このような論争と混乱は中道層に影響を与えると見られる。さらに、憲法第84条に関する論争が加われば、様々な犯罪容疑まで連想され、世論に影響を及ぼすのは避けられない。
3月7日のニューストマトの調査によれば、控訴審で有罪が出た場合、「次期大統領選に出馬すべきでない」が53.3%、「出馬可能」が41.5%だった。40代と全羅道を除くすべての年齢層、地域、中道層で出馬に否定的な意見が多かった。特にキャスティングボートを握る20代で55.5%、30代で60%、中道層で56.3%が「不出馬」と回答した。
犯罪容疑者を大統領にすることはできない、という攻撃が有効に働く可能性がある。
②任期短縮を伴う憲法改正
非常戒厳の混乱により、「帝王的国会」の姿が表面化した。国会の権限を強化した1987年憲法は、金泳三(キム・ヨンサム)・金大中(キム・デジュン)・金鍾泌(キム・ジョンピル)時代と異なり、陣営対立が激しい今では深刻な副作用をもたらしている。
小選挙区制の改編、大統領および国会の権限縮小などを軸にした憲法改正が、学界や政治長老、そして大多数の大統領候補によって公論化されつつあるが、李在明代表はこれを回避している。キム・ドンヨン京畿道知事は「任期短縮型の憲法改正論」で李代表に強く圧力をかけている。
憲法第85条の解釈によっては、大統領になったとしても退任後に再び裁判を受けることになる李代表は、多数の議席を背景に法改正などを通じて自らの犯罪容疑を免れるための十分な時間を確保しようとするはずだ。
すでに「共に民主党」の議員たちは、虚偽事実公表罪の削除や第三者収賄罪の縮小といった法案を提出しており、李代表は「司法リスク」から逃れるためにできる限りのことをしようとしている。長年にわたって大統領の座を夢見てきた「立志伝的な権力欲」を持つ人物だけに、2~3年の任期では満足しないと見られる。
憲法改正に対する賛成は54%、反対は30%(韓国ギャラップ3月第1週)という世論を考慮すると、「国民の力」にとっても、憲法改正論は50%を超える「審判論」(=政権批判)を分散させ、李在明代表との対立軸を明確にするための有効な争点となる。
③尹錫悦―キム・ゴンヒ夫妻のリスク
二大政党制では、相手の失敗が自分の栄養分となるため、他に大きな争点がなければ「審判論」は主要な選挙フレームとなる。
前回の大統領選と総選挙でも、審判論は5~10ポイント高く、そのまま結果に結びついた。現在も、政権審判論が50%、政権維持論はおよそ40%とされている。
多くの専門家は、尹大統領が仮に弾劾されても、強硬な支持層を背に「私邸政治」を行うと予想している。さらに、尹大統領が拘束された後、キム・ゴンヒ夫人が警護処職員に向かって「銃も撃たずに何してたの?」と発言したと報じられたことで、大統領選期間中にキム夫人の国政介入疑惑に対する「共に民主党」の全面攻勢も予想される。
このように、政権審判論を持続させる「キム・ゴンヒリスク」や「私邸政治」の存在は、「国民の力」にとって最悪の状況だ。審判論を避けられないのであれば、それを分散させるか、可能であればフレームを転換しなければならない。
そのためには、候補者選出から本選まで「不可能を可能にするドラマ」を描く必要があるが、尹大統領を擁護する強硬支持層の反発や、「国民の力」の戦略的な対応能力には不確実性がある。
ニューストマトの3月第1週の調査によると、「弾劾が認められた場合に、尹大統領と関係を維持して弾劾の不当性を訴える」は39.6%、「弾劾を受け入れて関係を断つべき」は55.1%だった。70代を除いた全世代、また大邱・慶尚北道と江原・済州を除いたすべての地域で「決別」世論が優勢だった。
「大統領選に勝てば尹大統領も救える」という強硬支持層の戦略的忍耐がカギを握る。
④スイング・ボーター「20・30世代」の世論の行方
選挙を左右するのはスイング・ボーターである中道層だ。その中でも中核となるのが「20・30世代(20~30代)」といえる。
大まかに見ると、60代以上は保守、40~50代は「共に民主党」支持が強い。この2つの世代は、それぞれ産業化と民主化の影響を受けているが、1996年のOECD(経済協力開発機構)加盟後に先進国として生まれ育った20・30世代は、脱イデオロギー・脱陣営的な傾向が強く、個人主義的で、利益を基盤にした信念投票を行う。
全有権者の30%を占める20・30世代(18歳以上含む)は、もともとは民主系の支持が高かったが、2022年の大統領選以降はキャスティングボートの役割を果たしている。20・30世代の支持が両党で拮抗すれば「国民の力」が勝ち、「共に民主党」支持が上回れば「共に民主党」が勝つ傾向にある。
15の世論調査機関の傾向の偏りを除去して平均値を算出する「Poll-A」分析によると、3月15日現在、20・30世代の支持率は、「共に民主党」が33.3%、「国民の力」が32%、または36.4%対35.1%と、ほぼ拮抗している。両党ともこの層を意識して、若年層の支持確保に注力している。
⑤候補者一本化
前回の大統領選で、「正義党」のシム・サンジョン候補が獲得した2.4%の票は、仮に候補一本化がなされていたとしても、李在明代表には流れなかっただろう。強硬な進歩(リベラル)層は、「国民の力」も「共に民主党」も「同じ穴のムジナ」と見ているからだ。
だが、「改革新党」と「国民の力」の関係はやや異なる。先日行われた早期大統領選に関する予備選では、92.8%がイ・ジュンソク議員の出馬に賛成票を投じており、忠誠心の高い「改革新党」支持者は、候補一本化が行われればイ議員の意向に従う可能性が高い。
前回の総選挙で「改革新党」の政党支持率は3.6%だった。
特に出口調査によると、20・30世代の男性支持率はそれぞれ16.7%と9.5%で、大統領選当時に「国民の力」を支持していた20・30世代の男性の多くが「改革新党」を支持したと見られる。3%程度の支持も、「51対49」の選挙では大きな変数となる。
予測として、イ・ジュンソクは、李在明と「国民の力」候補の差が大きければ完走し、接戦であれば選択の岐路に立つだろう。二大政党体制の中で「共に民主党」には行けない「汎保守系」のイ・ジュンソクにとって、「敗北の責任論」は今後の政治的立場に大きな負担となるからだ。
前回の大統領選でアン・チョルスが一本化に応じたのも、同じ理由だと見られている。
(記事提供=時事ジャーナル)
■多数の裁判を抱える「被告人」が大統領候補となるのか…李在明、“司法リスク”深刻化
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