韓国には“国籍変更ドーピング”という言葉がある。
実力のある外国人選手を帰化させ、自国の代表強化を計ることを指す言葉だ。ドーピングという言葉は行き過ぎた感もあるが、実は韓国でも近年、外国人帰化選手が増えている。
例えば記憶に新しい2018年平昌オリンピックだ。アイスホッケー、バイアスロン、リュージなど5種目19名の帰化選手が、韓国代表としてオリンピックに出場した。
その多くが2011年から韓国で実施している「特別帰化」だ。
韓国が2011年1月1日から実施している特別帰化は、「科学・経済、文化、体育などの特定分野でとても優秀な能力を保有し、韓国の国益に寄与すると認められる者」に限って与えられる“特権”だ。
一般帰化の場合、19歳以上、5年以上の国内居住期間、生計維持能力といった厳しい条件を満たさなければならないが、特別帰化の場合そのような条件が免除される。
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ただ、最優先に考慮されるのは血縁関係だ。親族のうちに1人でも韓国系がいれば、審査を通る確率が高まるらしい。
特別帰化の最大のメリットは、二重国籍が認められること。つまり、選手たちはオリンピックでメダル獲得という目的を果たせば、韓国籍を放棄して自国に帰っても何の問題もならないのだ。
それは、長く韓国スポーツを取材してきた立場からすると「韓国も変わったな」と感じる。
というのも、例えば韓国サッカー界では「外国人選手を帰化させてまで国の代表に迎える必要があるのか」という風潮があった。
2000年にKリーグで活躍したタジキスタン人GKサリチェフが韓国名シン・ウィソン(=神の手という意味)の名で韓国初の帰化選手となり、その後もロシアのデニス(イ・ソンナム)などが帰化してKリーグでプレーしているが、サンドロ・カルドソ・ドス・サントス(ブラジル)、モッタ(ブラジル)など韓国代表入りを前提に本人が帰化を希望しても実現しなかったケースが多い。
2011年に当時の韓国代表を率いていたチェ・ガンヒ監督が強く望んだブラジル人MFエディーニョの特別帰化申請も、大韓体育協会が「サッカーという種目の特別性を加味するとき安易な認可はできない」と、法務部への特別帰化申請推薦を棄却しているのだ。
そんな過去の前例を考えると、韓国とは血縁もゆかりもなく、のちに自国に戻ってもいいという特別帰化はかなりの変化だ。
もちろん、帰化選手の量産には賛否両論もあるようだ。
リオ五輪でも中国出身ながら卓球の韓国代表として出場したョン・ジヒに対してはさまざまな誹謗中傷があったが、その比ではないほどの激論が交わされている。
その中には日本では考えられないような辛辣な意見もあるようだが、これからも帰化選手は増えていくだろう。
韓国法務部も「我が国の成長動力確保や国家競争力強化のために、世界的に優秀な人材を積極的に発掘し、誘致するつもりだ」としている。スポーツだけではなく、さまざまな分野で
韓国の特別帰化は続く見込みだ。
(文=サーチコリアニュース)
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