愛と憎しみの『マジンガーZ』。韓国における日本のロボットアニメ人気とは?

2021年10月17日 話題 #サブカル
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日本でも根強い人気を誇るアニメ『マジンガーZ』。その劇場用映画『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』が2018年5月1に韓国で公開されたときのことだ。

「帰ってきた“マジンガーZ”…おじさんたちの思い出の旅にぴったり!」(『東亜日報』)、「マジンガーZが帰ってきた、もう一度人類を守るために」(『中央日報』)など、韓国大手メディアがこぞって報じ、一部のマニアたちの間ではかなり盛り上がった。

当時は韓国でも映画『君の名は。』が大ヒットしていたので、日本のアニメ映画が韓国で人気を呼んだのも頷けたが、それにしてもなぜ韓国でマジンガーZは有名なのだろうか。

『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』韓国ポスター

実は韓国でも1975年8月から毎週月曜日にテレビ放送されていたのだ。

当時の韓国は日本の大衆文化が禁止されていた時代。

そのため日本のアニメではなく、アメリカのアニメとして放映されていたとされている。

しかも、マジンガーZが韓国に与えた衝撃と影響はかなり大きかった。韓国ではマジンガーZがアニメ放送された翌年の1976年に『ロボット テコンV』なるアニメが放送開始されているのだ。

この『ロボット テコンV』は、マジンガーZとそっくりなことで有名だ。韓国では盗作疑惑にさらされ、テコンVの企画段階のタイトルが「マジンガーテコン」だったことなどが明らかとなり、韓国アニメ業界における“黒歴史”となっているほどだ。

前出の『中央日報』の記事では、「マジンガーZの影響で1976年にテコンドーと操縦型ロボットを結合した『ロボット テコンV』が誕生した」と紹介していたが、筆者の同世代の韓国人の中には、今でも『テコンV』が本家本元だと思っている者も少なくない。

しかも、同じようなケースは、サッカー漫画でもある。例えば『キャプテン翼』だ。

もともと『キャプテン翼』は韓国で不人気で、同じジャンプ漫画でも『スラムダンク』とは対照的なほどだが、それは同じ頃にとあるサッカーアニメが韓国でヒットしていたことも無関係ではないだろう。

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そのサッカーアニメのタイトルは『蹴球王シュットリ』。

ただ、実はこの『蹴球王シュットリ』も日本の漫画だったことを知らせると、多くの韓国中年男性たちが驚く。「テコンVにも日本のアニメを参考にしている」と教えると、複雑な苦笑いを浮かべる中年男性も多いのだ。

とはいえ、マジンガーZやテコンVは、その後の韓国におけるロボットアニメ人気の基盤になっているといっても過言ではないだろう。

例えば、「ガンダム」シリーズは、韓国でも根強い人気を誇っている。

ファーストガンダムと呼ばれる『機動戦士ガンダム』はもちろん、2000年以降放送された『機動戦士ガンダムSEED』や『機動戦士ガンダム00』シリーズは男性のみならず、女性ファンも多数存在するほどだ。

実際に人気俳優のシム・ヒョンタクやパク・ヘジン、プロ野球選手のファン・ジェギュンら男性有名人だけでなく、“コスプレ女神”とされるチェ・ヘヨンなどもガンプラオタクを公言している。

韓国にもガンプラを主体とした総合施設「ガンダムベース(GUNDAM BASE)」が2003年にソウルでオープンしており、現在は全国で9店舗まで拡大した。

ガンダム以外にも『エヴァンゲリオン』シリーズなど、ロボットアニメファンが意外に多い韓国。それだけに『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』にも注目が集まっているワケだ。

かつて少年時代に大好きだったテコンVへの愛着と、そのテコンVとの因縁からどこか愛憎が交錯する対象でもある『マジンガーZ』。韓国でも人気なワケは、そこにあるのかもしれない。

文=慎 武宏

*この原稿はヤフーニュース個人に掲載した記事を加筆・修正したものです。
 

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