”国宝”ソン・フンミンが足を痛めて倒れたにもかかわらず、ユルゲン・クリンスマンは手をこまねいていた。監督の資格があるのか、と思う。
クリンスマン監督率いるサッカー韓国代表は、11月16日にソウルワールドカップ競技場で行われた2026年北中米W杯アジア2次予選の初戦でシンガポール代表に5-0で勝利した。
勝ち点3を得た韓国は2次予選グループC1位に上がった。韓国は次戦、21日に中国・深圳で中国代表との第2節を戦う。
試合内容は無難な大勝だったが、唯一の汚点はクリンスマンの選手管理と運営だった。
後半18分、チーム3点目となるソン・フンミンのゴールが決まり、スコアが3-0となった時点で勝負は事実上決まった。
この程度になれば、中心戦力であり所属チームでも毎試合フル出場しているソン・フンミンやキム・ミンジェなどは、今後の試合のために休息を与えるのが妥当だ。
しかし、クリンスマンの考えは違った。
後半20分、イ・キジェ、チョ・ギュソン、イ・ジェソンを下げ、キム・ジンス、ファン・ウィジョ、チョン・ウヨンを投入した。その5分後にはファン・ヒチャンとファン・インボムをオ・ヒョンギュとイ・スンミンに入れ替えた。FWとMFを変え、より多くのゴールを狙うという攻撃的な交代だった。
すでに交代枠5枚を全て使い果たしたため、ソン・フンミンとキム・ミンジェは無条件でフル出場しなければならない状況になった。
3失点で敗戦濃厚となったシンガポールの選手たちは荒くなり始めた。
シンガポールの選手の激しいタックルがソン・フンミンを襲った。ソン・フンミンは苦痛を訴え、ふくらはぎを触りながら顔をしかめた。ソン・フンミンのコンディションが悪い兆しはあったが、クリンスマンは交代のタイミングを逃した。
そして後半終盤、ソン・フンミンはシンガポールのMFシャー・シャヒランの荒い反則に倒れた。
膝を強く蹴られたソン・フンミンはしばらくピッチ上に横になり、苦痛を訴えた。ややもすると重傷ではないかと疑われる状況だった。“国宝”ソン・フンミンが怪我をしてしまえば、5-0の勝利は何の意味もなくなる。
直ちに医療陣まで入ってきて、ソン・フンミンの負傷をチェックした。
そのときになってようやく深刻さに気づいたクリンスマンは、茫然自失の表情を浮かべた。クリンスマンは主審に抗議したが、すでに覆水盆に返らずだった。
幸い、ソン・フンミンはしばらくして立ち上がり、無事フル出場で試合を終えた。勝負欲と責任感が強いソン・フンミンなだけあって、負傷の苦痛があるにもかかわらずキャプテンの任務を100%遂行した。
クリンスマンが一歩遅れてソン・フンミンを下げようとしても、残りの交代枠がない状況だった。明白なクリンスマンの運営ミスだ。
万が一ソン・フンミンが重傷を負った場合、危険なタックルを加えたシンガポールの選手の直接的な過ちも大きいが、このような状況を事前に予測して対処できなかったクリンスマンにも100%責任がある。
格下のシンガポール相手に勝利が確実な状況で、あと数ゴールを決めようとしたが、“国宝”ソン・フンミンが大怪我をする恐れがあった。
一体、クリンスマンは何がもっと得なのかまったくわからないのだろうか?
なぜソン・フンミンを管理してくれないのだろうか。選手をきちんと管理できなければ、監督の役割は果たして何が残るのか。
試合後、クリンスマンはソン・フンミンに危険なタックルを浴びせたシンガポールの選手に言及した。
彼は「4-0の状況でファウルをするのを見て腹が立った。不適切で、しなくても良いファウルだった。必ずしもそのようなファウルをすべきだったのか?瞬間的にとても腹が立った」と話した。
ただ、サッカーファンはそもそもソン・フンミンをそのような状況に置くように手をこまねき、傍観していたクリンスマン監督のためにさらに腹が立っている。
クリンスマンの次のコメントがさらに火に油を注ぐ。
彼は「サッカーでは接触があるしかない。100%の状態でプレーができないという意味だ。例えば、ファウルされると5分間痛みを抱えることもあるが、その痛みを我慢して試合をするのが選手の役目だ。イ・ガンインも今日は足を引きずっていたが、我慢して後半は良い活躍をした。どれほど多くの選手がチームのために献身しているかを見ることができた」とし、「仕方がない」という風に話した。
そもそもソン・フンミンを早期に交代していれば、彼が足を痛めるという状況を事前に防げたという自覚は全く見られなかった。
クリンスマンがこのようなやり方で安易に選手を運営するのであれば、キム・ミンジェもイ・ガンインもいつか怪我をする恐れがある。
しかも、次の相手は「非マナー」で有名な中国だ。
ファン・ソンホン監督率いるU-23韓国代表も、直近の中国との親善試合で相手選手の常識外れの危険なプレーにオム・ウォンサンが足首をひどく痛めた。クリンスマンが中国に対する理解度が全くなく、再び主力をずさんに管理してしまわないか、早くも心配が先立つ。
そんななかでも、ソン・フンミンは「今は大丈夫だ。実際、ピッチ上で長く横になっているのは好きではない。少し足に感覚がなかった。自分一人が痛いからといって、試合を諦めるわけにはいかない。本当にプレーできない状況なら仕方ないが、プレーできる限りチームのために最善を尽くす」とコメントし、ファンを安心させた。
韓国の大勝はもちろん嬉しいことだが、苦痛を我慢してプレーしたというソン・フンミンの意志がかえって不安に聞こえる理由はなぜだろうか。
それは、クリンスマンが理解していながらも選手たちを大事にしないからだ。
今回はソン・フンミンがやられたが、次はキム・ミンジェやイ・ガンインが犠牲になりかねない。
(記事提供=OSEN)
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