現在、韓国芸能界で最も注目を集めているのがBTS・SUGAの飲酒運転事件。
世界的スターの不祥事であることはもちろん、兵役中であるという点、当初の事務所の説明が事実と多少乖離していた点、ニュース番組が誤った監視カメラ映像を報じた点など、複数の要素が絡み合い、大事件かのように現地では報じられている。
人身・物損事故で被害者がいるわけでもないので大した問題ではないというファンの声がある一方、「グループから脱退せよ」という過激な主張も飛び出ている。所属事務所前に「脱退せよ」などと書かれた花輪を並べ、トラックデモを敢行する者もいるなど、事件そのものよりも事が大きくなっている印象だ。
SUGAは今週中にも警察に出頭し、取り調べを受ける予定となっている。
ただSUGAに限らず、韓国芸能界では頻繁に飲酒運転事件が起きている。近年では、1998年にデビューしたSHINHWA(神話)のシン・ヘソン、ガールズグループAFTERSCHOOLの元メンバーであるLizzy、飲酒運転で事故をした挙句、マネージャーを身代わりにしようとした歌手キム・ホジュン、走行中のバイクと接触事故を起こし、死亡させたDJのイェソン、かつて天才子役として将来を嘱望された女優のキム・セロンなど、枚挙に暇がない。もちろん彼/彼女らは全体の極一部で、一般人の飲酒運転摘発も少なくない。
それにしても、なぜ韓国では飲酒運転が多いのだろうか。サムスン火災交通安全文化研究所が今年6月、興味深い調査結果を発表している。
同研究所が直近5年間(19~23)に警察庁に届けられた飲酒運転交通事故の統計などをベースに分析し、6月23日に発表した「飲酒運転再犯実態および韓日飲酒運転政策比較」によると、日韓の規制は似ているが、韓国の飲酒運転件数は減っていないのだという。
2019年に13万772件だった韓国の摘発件数は2020年に11万7549件、2021年に11万5882件と一時は減少したが、2022年に13万283件、そして2023年は13万150件と再び増加。また、2023年の事故件数は1万3042件で、日本の2346件(警察庁HP参照)の約5.5倍となっている。総人口は日本が2倍超であることを考慮すると、異常な件数であることがわかる。
2019年6月25日からは、ひき逃げ事故で大学生のユン・チャンホさんが亡くなったことで処罰・取り締まりが強化された、いわゆる「ユン・チャンホ法」が施行されているが、大きな効果は出ていないのが現状だ。
そして日本と処罰水準は似ているが、飲酒に対する寛大な文化などにより予防政策が不十分だとも指摘している。日本も韓国と同じく飲酒運転の取り締まり基準となる血中アルコール濃度は0.03%以下で、処罰も同様の水準だが、日本は韓国よりも早い2001年から規制を強化し、交通安全文化を早期に成熟させたことが功を奏したと同研究所は説明している。
今後、韓国では10月25日より、「飲酒運転防止装置設置義務化法」が施行される。これは、飲酒運転で2回以上摘発された再犯者に“イグニッション・インターロック・デバイス”の装着が義務化されるというもの。息を吹きかけ、基準値以上のアルコールが検出されるとエンジンがかからないという装置だ。
同研究所のユ・サンヨン責任研究員は、「飲酒運転はほかの交通法規違反とは異なり、中毒性という特性があり、本人の意志と短期的な処罰だけでは根絶しにくい」とし、「持続的な飲酒運転取り締まりだけでなく、飲酒運転の根絶を定着させるためには、車両提供者、酒類提供者など、飲酒運転ほう助制度に対する処罰義務化することも強化する」と強調していることから、よりドラスティックな改善が必要なことは間違いないだろう。
前述のように、飲酒運転で物議を醸した芸能人は長く表舞台に復帰できず、芸能生命の危機に瀕するケースも多い。もちろん、飲酒運転をした上で人身・物損事故が重なれば非難も大きくなるが、今回のSUGAのケースは被害が出ていない。
ただ、ユ研究員が説明していたように、飲酒運転には“中毒性”がある。一度きりで終わらず、バレなかったからと2度3度繰り返してしまう人が多いことから、SUGAが初犯ではない可能性も否定できない。
いずれにしても、今後の取り調べで明らかになることだろう。どのような結末を迎えるのか見守りたい。
(文=サーチコリアニュース編集部K)
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