韓国政府が強調する「麻薬との戦争」は、片手落ちのスローガンに過ぎないのだろうか。
麻薬事犯を多数摘発した捜査の成果とは裏腹に、治療・リハビリ教育は停滞しているように見える。
麻薬事犯は昨年2万人を超え、歴代最高記録を更新した。しかし、こうした人々に向き合う治療・リハビリ現場では、人員不足や場当たり的な対策といった問題が繰り返し指摘されている。
民間の麻薬中毒リハビリセンターは、韓国国内でかろうじて1カ所だけが運営されている。政府主導の麻薬中毒リハビリセンターは全国的に拡充されたが、慢性的な人手不足という状況に陥っている。
矯正施設(刑務所・拘置所)の事情も同様だが、違いもある。麻薬事犯は、ここでは「強制的に」薬物を断つしかない点だ。「麻薬持ち込み」といった重大な事件が発生しない限り、施設内での薬物投与は現実的に困難だ。
このような状況で法務部は、麻薬事犯に密着したリハビリ教育を開始した。それが2023年から釜山(プサン)刑務所と華城(ファソン)職業訓練刑務所で実施されている「回復つながりプログラム」である。
今年下半期からは、清州(チョンジュ)女子刑務所でも導入された。女性専用施設で行われるのはこれが初めてだ。
『時事ジャーナル』は11月12日、女性麻薬事犯の話がある清州女子刑務所を訪問した。今年6月に釜山刑務所を取材したのに続く、2回目の矯正施設訪問だ。
1989年に設立された清州女子刑務所は、「過密収容」の問題で悪名高い施設だ。収容人数は定員(610人)を常に超えている。
崔順実ゲート事件と呼ばれるチェ・ソウォン(改名前チェ・スンシル)、元夫を殺害し遺体を遺棄したコ・ユジョンなど、850人ほどが収容されている。収容率は140%に肉薄しているわけだ。
最近になって、さらに新しい肩書が加わった。女性麻薬事犯を対象に「回復つながりプログラム」が初めて導入された場所という点だ。このプログラムは、刑務所内での教育を通じて「回復」し、出所後には社会と「つながる」ことを支援するという趣旨だ。
現在、清州女子刑務所の「回復つながりプログラム」の参加者は8人。全国から応募を受けて選ばれた結果だ。そのうち1人は中国国籍の外国人麻薬事犯である。清州女子刑務所の収容現況からも、その傾向がうかがえる。外国人麻薬事犯の受刑者は約100人おり、施設内の麻薬事犯(140人)全体の約71%を占めている。タイや中国の国籍が多いという。
ニックネーム「モラン」は、韓国人と結婚して帰化したベトナム人である。今年11月18日に満期出所を迎えるまで、彼女が回復に専念した痕跡は明らかだった。自由を得る約1カ月前、彼女は後悔の念を込めてリハビリ日誌に次のように記した。
「麻薬をしているときは楽しくて、何が間違っているのか気づかなかったが、それが誤りだとわかった」
彼女は周囲の人々への感謝を述べた。「ブルースカイ(講師)さんがベトナムの歌を流してくれた」。また家族のことも思い出した。「麻薬をして刑務所に入った私を見て、毎日悲しんでいる母と娘のために、もう二度としないと伝えたい。本当に一生懸命にやり直すつもりだ(中略)私に温かい言葉をかけてくれる人たちがいることが幸せだ」。
モランが参加した「回復つながりプログラム」の特徴は、「治療共同体」にある。参加者たちは平日に内外の講師による教育を受け、お互いの考えを共有する。自発的に申し込んだ麻薬事犯が対象だ。
室内の自助グループ(NA:Narcotics Anonymous)運営相談、12段階促進治療方式の回復段階別カウンセリング、地域リハビリ施設との連携が大きな柱となっている。具体的には、映画や美術を用いた心理療法も含まれている。清州女子刑務所では、室内の自助グループや「リハビリ収容棟」を運営していない点が、釜山刑務所とは異なる。
代わりに、「回復つながりプログラム」の過程でNAが行われる。清州女子刑務所の保安庁舎地下1階には、これらの成果が残されている。過去3カ月間、参加者たちが見て、聞いて、感じたことが形になったものだ。
約20坪ほどに見える「学びの場(回復つながり教室)」の中央には、机と椅子が円形に配置されており、講師「ブルースカイ」と参加者が座って交流していたことをうかがわせる。壁には様々な色彩の絵が飾られている。参加者たちが治療過程で描いた自身の顔、家族、ペットなどだ。
今年28歳の韓国人「チンダルレ」は、ある人のことを思い浮かべた。アルバイト時代に出会った店の社長だ。彼女は10月15日、「被害補償の準備および変化の準備」というタイトルのプログラムを受け、彼に申し訳なかった気持ちを抱いた。
「長い間、知り合いだった店の社長さんのことを思い出した。(私が)拘束されたことで店に被害を与え、社長にも迷惑をかけてしまったことを思い出し、今日の授業で迷惑をかけた人全員の名前を書き出すべきだと思った。麻薬から離れつつあったときに、ここに来た。最初は怒りが込み上げ、(麻薬投与が)初めてではなかったので、予想以上に長く課せられた刑期に、二次的に怒りが込み上げた」
映画は治療道具として活用される。麻薬事犯が登場する場面が特にそうだ。韓国人「ミリネ」は10月17日に映画療法を受けた後、麻薬問題の深刻さを認識した。無分別に拡散している現実だ。「麻薬の道にハッピーエンドは絶対にない。投与者であれ販売者であれ…」。
熱心な参加者とされる「ハナビ」は、10月30日に次のように記した。「(印象に残っている場面は)刑務所の一番大きな門を叩きながら母を呼んで泣き叫ぶ子供の姿がとても哀れだった。もう二度とここには戻りたくない」。
しかし懸念の声も存在する。
まず、「回復つながりプログラム」はすべての矯正施設で実施されているわけではない。仮に拡大されたとしても、講師不足や施設の悪条件といった現実的な問題がある。
特に出所後の問題が大きい。薬物断ちの最大の課題は、中毒者の自発的な意志だ。「これを維持し、回復に導く鍵は自助グループ(NA)」だと専門家は指摘する。だが民間領域のNAが活性化していないのが現状だ。
現在、清州女子刑務所で講師を務めるパク・ウヨン臨床心理士(清州市中毒管理統合支援センター)は次のように説明だ。
「国内の麻薬治療・リハビリ教育はまだ歩き始めたばかりだ。ただ、『回復つながり』をはじめ、食品医薬品安全処傘下の中毒リハビリセンターなどの存在自体はありがたいこと。麻薬事犯は出所後、こうした場所の助けを受けるべきだ。残念なのは、民間領域のNAの現状にある。ソウルや釜山を除くほとんどの地域では、改善が必要な水準だ。このような状況であるため、初期の中毒相談が重要にならざるを得ない。警察の捜査段階で薬物断ちを促す相談が行われるべき。そして出所後も地域社会と自然に連携できるよう、関心と介入が必要だ」
清州女子刑務所での初の「回復つながりプログラム」は11月20日に終了した。参加者たちはここを去るか、いずれ去ることになる。彼女の家族は、彼女が出所するクリスマスの日を待っている。
「毎日毎時間、時間ができるたびに祈りで瞬間の感情と現実を振り返り、習慣のように(回復つながりプログラムの一部である)1段階から12段階までを繰り返している」
はたして彼女たちは、自身のリハビリ日誌に残した誓いを社会でも守り続けることができるだろうか。
(記事提供=時事ジャーナル)
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