ソウル市内を循環するバスの座席に少女像(=慰安婦像)のプラスチック製レプリカが設置されたことは日本でも話題だった。
ところがこの夏、日本の若者に慰安婦問題を知ってもらおうと、韓国の大学生たちが自転車で日本横断の旅をしていたことをご存知だろうか。
『韓国日報』によると、慰安婦被害の真相を知らせるために仁川(インチョン)大学の在学生3人で結成されたプロジェクトチーム「輪のついた謝り」は、7月4日から35日間、札幌から福岡までの約2500キロを自転車で走った。
その長旅の目的は、日本人に日本軍慰安婦の歴史を伝え、その歴史に共感した日本人とフリーハグ(FREE HUG)を交わすこと。
「これから日本を背負う若い世代は、慰安婦問題をまったく知らないか、歪曲された内容だけを知っている。フリーハグは、彼らに正しい歴史を伝えて“謝罪のハグ”をしてもらうために企画したもの」と、メンバーのムン・ヨンジュンさん(25)は話している。
毎日80キロずつ自転車をこぎ、有名スポットでは3人がそれぞれ「FREE HUG」や「慰安婦問題日韓合意は被害者の立場を反映していない」などと書かれた横断幕を持って立ち止まる。
当然日本人の反応は冷たいだろうと予想していたが、意外にも「毎回20人以上の人たちが興味を持って近づいてきた」そうだ。
日本に居住している韓国人から冷たいお茶のペットボトルやお小遣いを渡され、エールを送られたことは度々あったが、福岡では日本人の老人から「応援するよ」という言葉とともに1万円を渡され、びっくりしたという。
ムンさんは「本当に驚いたし、ありがたかった」と、そのときの感想を述べた。
しかし、良い思い出ばかりあるわけではない。
血気盛んな20代とはいえ、真夏の自転車旅は体力的に相当大変だったという。ホテルを確保できず野宿をしたことも多く、雨の中で転んでしまい自転車が壊れる経験もした。
そして何よりも辛かったのは、一部の人から向けられた冷たい視線だった。
「仙台では“日本政府の許可を得たのか”と文句を言われ、唾を吐き捨てる男性がいた。僕らがじっとしていればもっと誤解を生みそうで、通訳アプリで会話を試みたりもした」と、メンバーのチョン・グヒョンさん(25)。
歴史問題をめぐっては日本とはっきり対立していた彼らだが、一方で“今の日本”を楽しむことも忘れなかった。
「輪のついた謝り」の公式Facebookにはスケジュールの合間を縫って名古屋城や京都の伏見稲荷神社などを見物している彼らの写真がアップされている。
投稿の中には「富士山の美しい風景のおかげで最後まで頑張れた」という書き込みも。最近の韓国の若者たちの多くは「日本は好きだが、歴史問題は別だ」と思っているが、いかにもその通りだなと感じた。
いずれにしても、韓国ではかつてないほど慰安婦問題が過熱している。この状況が一刻も早く解決されることを願うばかりだ。
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