韓国の人気報道番組『ニュースルーム』のキャスター、アン・ナギョン。
朴槿恵前大統領の国政介入事件をスクープするなどしてその名を高めた報道番組JTBC『ニュースルーム』の看板キャスターでもある彼女に、女性として報道現場で働くことの難しさややりがい、日本について聞いたことがあった。
今から4年前の2017年3月ことだ。その言葉には、日本では見えてこない韓国の報道制作の裏側なども覗かせる。ひとつの参考として、当時のインタビューをここに再現しよう。
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―韓国の報道の現場というと、男社会のイメージがあります。女性が現場で活躍する難しさはないですか。
もともと些細なことでストレスを受けたり、敏感に反応したりすることのない、のんびりした性格なんです(笑)。それでもたまには大変なときもありますよ。
いつも緊張していなければいけない生活が手に余るときもあります。また、以前に比べれば改善されたとはいえ、女性アナウンサーに期待される年齢や外見なども、負担に感じることがあります。
とはいえ、それらは身に余るほど多くのもの、例えば私の話や声をたくさんの人々が聞いてくださることなど、特別な機会を与えてもらっているだけに向き合うべきことですし、自分の発展の肥やしにもなると思っています。
―日本では人気の女子アナウンサーがタレントとして活躍するケースも見られます。韓国はどうでしょうか。
韓国も状況は似ていると思います。フリーに転向するアナウンサーもとても多いです。多様な活躍の場があり、また先ほど申し上げた倍率の話を見ても、人気の職業だと思います。
韓国と日本は共通点があるようです。日本の女性アナウンサーを見ていると、とてもかわいらしい方が多くて、大変人気もありますよね。
―日本のテレビ番組をご覧になったことがあるのですか。
実は日本が大好きで、休暇のたびに日本に旅行しています。昨年も夏と冬に行きましたし、今年も夏と冬に絶対に行こうと思っています。「次はいつ日本に行けるかな」と考えているほどです(笑)。
幼い頃に見ていた漫画や映画も日本のものが多かった。小さい頃は韓国のものだと思っていましたが、知ってみると日本のものばかりでした。
ジブリの映画は特に好きで、すべて見たかもしれません。一番好きな作品ですか? ひとつだけ選ぶのは難しいですが、『耳をすませば』『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』などはすごく好きです。久石譲さんの音楽もとてもいいですよね。
日本のドラマも見ていますよ。女優では蒼井優さんが好きです。『リーガルハイ』を見てからは堺雅人さんも素晴らしい俳優だと思っています。日本から来た記者さんだから、こう話しているわけではないですよ(笑)。
日本が大好きなので、日本の方々ともっと距離を縮めて仲良くなりたいですね。もし機会があれば、日本で支持されている言論人に会って、お話をしてみたいと思います。
―年に2回も日本に来ているとは…。本当にお好きなようですね。
お寿司をはじめ日本料理も好きですし、文化が好きです。日本には発展した個人主義があると思うんです。個性を尊重する文化や、ひとりでご飯を食べる文化など、そういう日本の姿に共感できるんです。これからも何度も日本を旅行すると思います(笑)。
―日本旅行の他に、何かリフレッシュ方法がありますか。
子供の頃に住んでいた実家はソウルですが、山のすぐ下にあって、目の前には小川が流れていました。そんな環境で育ったせいか、自然の中にいるのが好きです。週末には、山や川の散歩に行きます。小さなリュックサックを背負って、母親と一緒にバスに乗ったり散歩をしたりしていますね。
あちこち歩いてみると、いろいろと発見があるんですよ。多くの人が生活する姿を観察することができますし、言論人としての自分の責務を再確認するきっかけになったりします。
他には、クラシック音楽が好きです。特にピアノ公演を見にいくのが大好き。また、クラシック音楽を聞きながらするバレエも好きで直接学んだりもしました。
―最後にアン・ナギョンさんの今後の目標を教えてください。
カール・セーガンの「ペイル・ブルー・ドット」(the Pale Blue Dot)という写真をご存知ですか? 真っ暗な背景に小さな青い点が写っているんです。宇宙から見た地球なのですが、私はその写真を見ると2つのことが思い浮かびます。
宇宙からすれば地球は、本当に埃のような小さな存在。その埃のような小さな空間で、多くの人たちがさまざまな活動をしながら生きています。だから同じ時代に生きている人は、みんな“同志”ではないかと思えてくるのです。
せいぜい数十年生きるだけなのだから、同じ時代に生きる同志には、みんながもっと優しくなれるのではないかと思うんです。そういう社会を作るために、自分も貢献したいというのが目標です。
一方で、そんな埃のような小さな存在だからこそ、価値のある生き方をしたいと思うんです。一瞬でもキラリと輝けるような、そんな存在になりたいと考えるんです。そのためにこれからも言論人としての役割を果たしていきたいです。
(文=慎 武宏)
*この原稿はヤフーニュース個人に掲載した記事を加筆・修正したものです。
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