大統領選への出馬の意思は?尹大統領の弾劾に賛成票を投じた与党の“異才”、アン・チョルス議員の胸中

2025年02月15日 政治 #時事ジャーナル
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尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の非常戒厳令発令後、弾劾訴追案に公開的に賛成の意を示し、自身の信念を貫いてきた与党「国民の力」のアン・チョルス(安哲秀)議員。

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彼は最近の保守結集の動きのなかで、尹大統領との結びつきを維持し続ける自党に対し、「(早期大統領選が行われた場合)『戒厳擁護党』は負けるしかない」と指摘した。

アン議員は「(弾劾に反対する世論である)30%だけでは勝てない。共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が大統領になるべきではないという中道層を引き込み、50%を超えなければ勝利できない」と強調した。

2月12日、ソウル龍山区の『時事ジャーナル』本社で与党の4選議員であるアン議員に会い、彼が考える中道層を取り込む戦略や大統領選への意向について話を聞いた。

―最近、李在明代表は進歩政策であれ保守政策であれ、有益なものであればすべて受け入れるとして、「チャルサニズム」という概念を持ち出した。李代表が連日、「右側ウィンカーを点滅させている」との見方も出ている。

アン・チョルス議員
(写真=時事ジャーナル)アン・チョルス議員

「羊頭狗肉」(うわべだけ立派で中身が伴わないこと)ということだ。政治家は言葉ではなく、足がどこへ向かっているかを見なければならない。人の本心はそこに表れるものだ。

これまで李代表は、国家が持っている財源を分配する方向の話を主にしてきた。しかし大統領選が目前に迫った途端、突然「成長」を掲げている。だが、その成長をどう実現するのかについての具体的な説明はない。

国会議員の不逮捕特権を放棄するといいながら、自身がその対象になると、逮捕同意案の採決を控えて演説で訴えたではないか。このように発言が変わる政治家をどうして信じられるのか。

―李代表は「週52時間労働制の例外適用」に言及したかと思えば、交渉団体演説では「週4日制の導入」を主張し、「一貫性がない」との批判も出ている。

前後の整合性が取れていない。その二つを両立させるのは非常に難しい。労働時間については職種別、業務の特性に応じて分けることができるかもしれないが、一律に「週52時間労働にすべきだ」「週4日制にすべきだ」とするのは説得力に欠けると思う。

―李代表が国会議員「国民召還制(リコール制度)」の導入を主張していることについてはどう考えるか。

賛成だ。国会議員が一度当選したからといって、その権利を当然のように享受するのは正しくない。大統領に弾劾制度があるように、選挙で選ばれた公職者も、国民が一定の割合以上の同意を得られれば召還できる仕組みを整えることには賛成だ。

―李代表の司法リスクについて強く批判している。

「共に民主党」李在明代表
(写真=時事ジャーナル)「共に民主党」李在明代表

李代表は現在、5件の裁判を抱えており、そのうち1審で被選挙権剥奪に該当する有罪判決を受けた公職選挙法違反の2審判決が3月中に出る見込みだ。その後、最高裁での判決が出なくとも、2審で有罪となれば、李代表は大きく動揺することになるだろう。

私は、裁判を受けている候補者は選挙に出るべきではないと考えている。裁判中の人物について、国民が有罪か無罪かわからない状態で投票するのはおかしい。

―李代表が選挙法違反の2審で、自身に適用された虚偽事実公表罪について憲法裁判所に違憲審査を申し立てたことについてはどう思うか。

あきれた話だ。すでにこの罪について、憲法裁判所は違憲ではないと判断している。単に時間を引き延ばして、どうにか裁判を遅らせようとする策略に過ぎない。国民を欺く行為だと思う。

―各種世論調査では、尹錫悦大統領と与党の支持率が戒厳令以前よりも上昇する傾向にある。これをどう解釈するか。

現在、保守勢力が結集しているのは事実だ。しかし、懸念すべき点がある。(弾劾反対集会が開かれる)光化門や汝矣島には非常に多くの人々が集まっている。彼らと話をしてみると、考えは皆同じだ。

はてしなく続く集会の参加者たちを見ながら、「これだけいれば私たちが勝った」と安心してしまう。しかし、実際にこう考えている人々は、国民全体の多くても30%程度に過ぎない。

その中には、自分たちと少しでも考えが異なる人を排除しようとする人もいるが、それこそ彼らが最も望んでいないはずの李代表を大統領にしてしまう道だ。

―なぜそう考えるのか。

中道層を取り込むことが鍵だからだ。本当に李代表が大統領になってはいけないと思うなら、9つの考えが違っても、「李代表はダメだ」というたった1つの共通点だけでも持つ中道保守や中道層を、すべてこちら側に引き込まなければならない。50%を超えなければ勝てない。

考えを変えられなければ、望まぬ不幸な事態が起こることになる。もし大統領選が行われるなら、必ず中道層が決定権を握る選挙になるだろう。

―最近の「国民の力」の指導部や親尹派の動向についてはどう見ているか。指導部の関係者が尹大統領の拘置所を訪問する様子が続いているが。

(写真=時事ジャーナル)尹錫悦大統領

万が一早期大統領選が行われる場合、国民の力が「戒厳擁護党」になれば負けるしかないと考える。指導部を含め、大統領を訪問した人々がいるが、それを止めるつもりはまったくない。個人的な縁もあるのに、完全に知らないふりをすることなどできないだろう。

ただし、重要な職責を持つ人々は外部に公表せず、静かに会ってくるべきだったのではないかと思う。「戒厳擁護党」と見られてはならない。我々の党のためにも、大統領のためにも、それが適切だと考える。

―尹大統領側はもちろん、党内の一部も同調している不正選挙論についてはどう考えるか。

選挙の管理不備について通報し、捜査するのは正しいことだ。そこで新たな問題が発覚すれば、追加の捜査を行えばいい。しかし、そのような過程もなく、最初から不正選挙だと主張する人々がいるが、現在のところ確実な証拠を見つけるのは難しい。

もし検察や警察が不正選挙の明確な証拠を掴んだら、黙っているだろうか。そうではないと思う。それが大韓民国ではないか。今でも地球が平らだと信じている人を説得するためには、根本的にインフラを変える方法がある。

人口130万人のエストニアでは、現在、投票時にブロックチェーン技術を活用している。ハッキングもできず、操作も不可能だ。すでに成功例があるのだから、我々も次の地方選挙や総選挙で、一部の地域で新しい方式を試験導入し、問題がなければ全国的に拡大する形で取り入れるのはどうだろうか。

―昨年12月、国会の弾劾訴追案の採決で公開的に賛成票を投じた。最近、与党内では弾劾反対の世論が強まっているが、後悔はしていないか。

後悔はしていない。非常戒厳当時、(憲法上の非常戒厳要件である)国家非常事態とは言い難かった。野党が連続して弾劾を行い、混乱を引き起こしたが、これは政治的に解決すべき問題だった。

また、国会に軍隊を投入し、警察を配置して、一般市民だけでなく国会議員の立ち入りも阻止した。私も塀を越えて国会に入るしかなかった。非常に大きな問題だった。さらに、国務会議では閣僚の署名もなかった。違憲の疑いが多い戒厳だった。

ただし、国会は弾劾訴追を行う機関にすぎず、弾劾の可否を判断するのは憲法裁判所だ。憲法裁判所が判断できるように訴追する必要があると判断したため賛成したのであり、後悔はない。

―単刀直入に、大統領選への出馬の意思はあるのか。

アン・チョルス議員
(写真=時事ジャーナル)アン・チョルス議員

野党であれば、すでに多くの候補が名乗りを上げているだろうが、与党では大統領の弾劾審判の結論が出る前に出馬宣言をするべきではないと考えている。それは道理に合わない。

私は現在、AI(人工知能)に関する党の全権を任されて重要な時代に働いており、トランプ政権2期目という激動期に、外交統一委員会の活動を通じて外交面でも様々な仕事をしている。自分の職務に忠実であることが未来を準備する道だと考えている。

2022年の大統領選では3人の候補がいた。尹錫悦大統領、李在明代表、そして私だ。準備はすべて整っている。

―アン議員は第3極で政治をしてきた経緯があり、現在の「国民の力」の状況を踏まえると、再び第3極に移るのではないかという見方もあるが。

「国民の力」が私にとって最後の政党だと思っている。ここを離れて他の党に行く考えは微塵もない。

―もし早期大統領選が行われるならば、次の政権に必要な条件は何だと考えるか。

政治家にとって最も基本となるのは清廉さだ。それが問題になることが多いではないか。次に、未来に対するビジョンを持っていることが重要だ。韓国を今後どのように導いていくのか、そのビジョンが不可欠だ。

3つ目はグローバルな感覚だ。かつては必要ないと考えられていたかもしれないが、現在、韓国は世界10大経済大国の一員であり、グローバルな視点が必須だ。

―憲法改正を求める声が高まっているが、どのような方向の改憲が望ましいと考えるか。

一言でいえば、「権力を縮小した大統領制」にすべきだと考える。アメリカの大統領は行政権しか持たないが、韓国の大統領は5つの権力を持っている。行政権だけでなく、国会が拒否しても人事を決定できる人事権、さらには予算権、監査権、立法権まである。まるで「絶対権力の指輪」のように、すべてを掌握している。

これはもはや君主制と変わらない。これを是正することが最も重要であり、次の政権はそれを公約し、実行しなければならない。

―IT企業家出身として、中国の低コストAI「ディープシーク・ショック」をどう見ているか。また、韓国の課題は何か。

アメリカや中国に比べて大きく遅れを取っている韓国にとって、これは危機であると同時に、ハードウェアではなくソフトウェアや他の分野の革新によって追いつくことも可能だという事例を示してくれたという点で、チャンスでもあると考える。

しかし、現在の韓国は様々な面で不足している。中国は今後5年間で1200兆ウォン(約126兆円)、アメリカは4年間で730兆ウォン(約77兆円)をAI分野に投入する計画だ。我々の昨年通過したAI予算は1兆8000億ウォン(約1900億円)にすぎない。これでは追いつくのは本当に不可能だ。

資金も、人材も、コンテンツも不足しており、これらをすべて克服する方法を見つけなければならない。これは、私が委員長を務めている「国民の力」の「AI三大強国飛躍特別委員会」の最も重要な使命だ。

―最も緊急に取り組むべきことは何か。

追加補正予算の編成だ。現在、20兆ウォン(約2兆円)規模であればインフレーションに影響を与えずに追加補正予算を実施できるとの専門家の分析がある。全体の規模を20兆ウォン程度と設定し、与野党の協議を通じて、そのうち5兆~10兆ウォンをAI産業のソフトウェア、ハードウェア、人材育成に投入すべきだ。これが最低限、最も緊急に必要な対策だ。

―多くの研修医や医学部生が現場を離れた「医・政対立」の解決に向けて尽力してきたが、現状をどう診断するか。

2年経っても学生たちが戻ってこない。これは想像もしていなかった。研修医の応募がなくなっている。このままでは医療崩壊の道をたどることになる。今後、改善を試みたとしても、どこまで回復できるかわからない。

個人的には、完全な回復はもう難しいと見ている。以前のように安価で迅速な治療を受けられるシステムには戻れないだろう。尹錫悦大統領は、おそらく歴史に残ることになるだろう。

今後の解決に向けては、結論を先に出すのではなく、まずは対話の場を設けることが重要だ。政府は正常化が最優先だと強硬な姿勢を取らず、柔軟に対応することを約束すべきだ。

(記事提供=時事ジャーナル)

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