韓国の若者たちが作り出した社会的身分制度「スプーン階級論」とは

2016年02月10日 社会
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恋愛、結婚、出産をあきらめた「3放世代」に始まり、プラスしてマイホームと人間関係をあきらめた「5放世代」、さらに夢や希望まであきらめた「7放世代」という言葉まで生まれている韓国。

そんな韓国の若者たちの間で広がる「スプーン階級論」をご存じだろうか。

スプーン階級論とは、「裕福な家庭に生まれる(Born with a silver spoon in one’s mouth)」という英語の慣用句を受けて、「金の匙」「銅の匙」「土の匙」など、貧富の差によって人を区別し分類すること。

「金の匙」は、親の資産が20億ウォン(約2億円)以上、または年収2億ウォン(約2000万円)以上の、いわゆる超富裕層だ。資産10億ウォン(約1億円)以上、または年収8000万ウォン(800万円)以上なら「銀の匙」という。

常識を超えた財産を持つ財閥一族などは「ダイヤモンドの匙」といい、2012年の調査資料によると、ダイヤモンド・金・銀の匙の階級層の中でもそれぞれ上位10%の人たちが、なんと韓国国民全体の資産の45%を支配しているそうだ。

ちなみに「銅の匙」の人は、資産5億ウォン(約5000万円)以上、または年収5500万ウォン(約550万円)以上。これなら、まだ十分勝ち組といえるだろう。

「鉄の匙」「木の匙」、さらに下も

しかし、問題はそこから下の階級だ。

平均的な庶民は「鉄の匙」「木の匙」「プラスチックの匙」と細かく分けられていて、さらにその下には、公務員でもなく、大企業勤務でもない人たちが多数を占める「土の匙」が存在する。

土でできているため、形を保つのがやっとで、一生食うに困るという絶望的な意味が込められている「土の匙」は、「ヘル朝鮮(地獄のような韓国という意味)」とともに、2015年の流行語にもなった。

この「土の匙」よりもさらに下には、生活保護を受けて暮らしていたり、ホームレスである「糞の匙」と、スプーンすら持てないほど貧乏な「手の匙」がある。

厳しい現実に絶望する若い世代が作り上げたこのスプーン階級論は、まるでインドのカースト制度のように残酷だが、若者たちはスプーンに例えて身の上を哀れんでいるだけではない。

というのも、スプーン階級論によると、社会的地位の獲得や成功の可否は、本人の努力ではないという。

ずばり、親の経済力次第で決まるというのだ。

つまり彼らは「就職や結婚ができないのは、お前らの努力が足りないから」と責め立てる大人に対して、「努力してみたけど、あなたが与えてくれたスプーンのせいでダメでした」と、スプーン階級論を用いて皮肉をいっているのだ。

実際、スプーン階級論があながち間違いでもないことを証明する研究データも出ている。データによれば、韓国人の資産のうち、相続比率は2000年代に入って42%まで増えており、これからもますます増えていく見込みだという。

スプーン階級論が広まるにつれ、ネット上には「我が家は何匙ですか?」と質問する若者が増えている。資産、家の大きさ、親の職業と年収、携帯の機種まで公開し、自分が何匙なのかを人に査定してもらうのだ。子どもたちの間でも「お前って何匙?」と聞くのが流行っているという。

格差社会と指摘されて久しいのは日本も韓国も同じ。ただ韓国の社会風刺やブラックユーモアであるスプーン階級論は、少し社会的影響力がありすぎるかもしれない。

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