日本は世界で唯一の「被爆国」だ。ただし、被爆者は日本人ばかりではない。被爆した日本人とは比べものにならない人数だが、日本で生活をしていた外国人の被爆者もいるのだ。
原爆に関する日本の最高裁判所の初判断で、韓国が大きく沸いたことがあった。2015年9月8日、日本の最高裁が海外に住む被爆者にも「被爆者援護法」の医療費全額支給が適用されるという判決を下したのだ。
在外被爆者は約4200人とされるが、そのうち3000人は韓国在住者ということで、韓国でも話題となった。
当時韓国のインターネット上では、全額支給の判決を下した岡部喜代子裁判長を「韓国に招待したい」「韓国の判事よりも判事らしい」「国家ではなく、人権の生命尊重権を重視する裁判官」などと称賛し、韓国政府も「最高裁の判決を歓迎する」と好意的な見解を述べた。
そもそもこの判決は、ある韓国人被爆者が起こした訴訟を発端としている。
イ・ホンヒョン氏(69歳)と、被爆者遺族2人が2011年に大阪府を相手に起こした訴訟だ。イ氏は、三菱造船所で働いていた“強制徴用”労働者の息子で、広島に原子爆弾が投下された当時、母親の胎内にいたという。終戦後、韓国に帰国したイ氏は、高血圧や慢性心不全に悩まされ、37歳のときに正式に被爆者としての診断を受けた。
彼は2008年に日本で治療を受けたが、日本人と韓国人の被爆者には医療支援における格差があることを知り、訴訟に踏み切っている。イ氏が大阪府に請求したのは、韓国で使った医療費2700万ウォン(約270万円)だ。
一方で、イ氏が訴訟を起こした背景には、韓国政府の“ほったらかし”があったからともいえるかもしれない。その証拠に、最高裁で判決が出た9月8日にも、韓国人被爆者たちは韓国政府相手に抗議活動を行っているからだ。
その日、韓国人被爆者たちは国会前に集い記者会見を開いており、参加者たちは「韓国は被爆者が世界で2番目に多い国。それなのに70年の歳月が流れても韓国人被爆者を支援する法案ひとつないのが現実」と声を上げている。
韓国原爆被害者協会のソン・ナクク会長も、「病気や老衰で歴史の証人たる被爆者がだんだん減っているだけに、早急な支援が行われなければならない」と切実に求めていただけに、「最高裁の判決を歓迎する」と発表した韓国政府を厚顔と非難する声も聞こえた。
今後は、医療費を支払う対象や範囲がポイントとなるだろう。いずれにせよ、被爆者たちの苦痛が一日も早くなくなることを願うばかりだ。
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