2015年からタバコに対する規制を強化してきた韓国。現在、全てのカフェや飲食店は全面禁煙で、昨年からはタバコのパッケージに“警告写真”が導入されるなど、喫煙者はますます肩身が狭くなっている。
そんな韓国の喫煙者たちが“最後の砦”としてきたのが、「スモーキング・カフェ」だ。
2016年から登場しはじめたスモーキング・カフェは、その名の通り全座席で喫煙が可能。非喫煙者を気にすることなく時間を過ごせるので、喫煙者にとってはこれほど居心地の良い場所もないだろう。
保健福祉部の資料によると、今年9月時点で営業中のスモーキング・カフェは、全国で36店舗。
ソウルに10店鋪、京畿道に4店鋪、釜山や大田などに3店舗など、済州島と世宗特別自治市を除く全ての地域に存在するという。
いくら喫煙に対する規制が厳しいとはいえ、韓国にも日本のような公共の喫煙ブースは存在する。ただ、問題として指摘されるのは換気設備がしっかり整っていないところだ。設置されている多数の喫煙ブースはタバコの煙や匂いで充満しており、非喫煙者はもちろん、喫煙者をも息が詰まるほどの不快感を感じるという。
それに比べ、スモーキング・カフェは通常より8倍ほどの性能を誇る換気設備が整っているため、快適な室内を維持できるとか。韓国メディア『Insight』の取材に応じたスモーキング・カフェの店長は、カフェをオープンした理由について「少なくない喫煙者たちが快適にタバコを吸えない現実が悲しかった」と語っている。
特筆したいのは、スモーキング・カフェに訪れる客の7割が女性ということだ。
前出の店長は「今だに女性喫煙者に対する社会的な視線が厳しいから」と分析しているが、確かに韓国では同じ喫煙者といっても男性と女性とでは一般的な認識に大きな差があり、女性喫煙者に向けられる視線も男性より冷たい。
スモーキング・カフェに女性たちが多いのも、必然の結果だったかもしれないが、とにかく、喫煙者と非喫煙者すべてを満足させる新たな空間として、スモーキング・カフェに対する期待の声も上がっていた。
ところが、そんなスモーキング・カフェもそろそろ見納めになりそうだ。保健福祉部によると去る10月24日、スモーキング・カフェを禁煙区域と義務的に指定するべく、「国民健康増進法一部改正法律案」が国会会議を通ったというのだ。
そもそも、スモーキング・カフェは“カフェ”と名付けられた分、禁煙が義務付けられた休憩飲食店として営業許可を取るのが原則だが、ほとんどの場合、禁煙の義務がない自動販売機店舗として虚偽の申告をしているという。
「スモーキング・カフェは法律の死角地帯で義務を回避している店舗で、禁煙区域に指定されるべきだ」と、保健福祉部の関係者。
このような動きに対し、喫煙者からは「そんなに喫煙者が嫌なら、いっそのことタバコを売るな」「正直スモーキング・カフェまで規制するのは酷い」「禁煙したくてもできないよー、どうすればいいんだよ」「国中が禁煙区域だな」といった不満の声が上がっている。
喫煙者に対する圧力は、どこまで続くか。今後の動向に注目したい。
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