韓国警察が、中絶手術を執刀した病院の院長と医師、さらに手術を受けた女性ユーチューバーを殺人容疑で送検した。
7月4日、韓国の警察によると、ソウル警察庁の刑事機動隊は同日午前、殺人容疑が持たれている80代の病院院長ユン氏と60代の執刀医シム氏を逮捕・送検したと発表した。
この騒動の発端は、2023年6月に女性ユーチューバーA氏が自身のチャンネルに投稿した動画だった。タイトルは「手術費用は総額900万ウォン(約90万円)、地獄のような120時間」。その中でA氏は、妊娠に気づくのが遅れ、妊娠36週(9カ月)で中絶手術を受けたと明かしていた。
この動画が拡散されると、ネット上では「実質的に胎児を殺したのではないか」とする批判の声が殺到。これを受け、保健福祉部(日本の厚生労働省に相当)が警察に捜査を依頼した。
韓国では「母体保護法」により、妊娠24週を超えた中絶は原則として違法とされている。ただし、2019年4月に憲法裁判所が「中絶罪は憲法不合致」と判断したことで、刑法上の中絶罪は効力を失っており、現在は明確な処罰規定が存在しない。
しかし警察は、今回のケースを通常の中絶とは異なると判断。妊娠36週の胎児はすでに子宮外での生存が可能な水準に達しており、胎児が母体の外に出たあとに死亡したと見なしている。手術に関わった医療スタッフが出生直後に必要な救命措置を行わず、放置したことが死亡につながったという見解だ。
この判断に基づき、警察は中絶手術を受けたA氏を殺人容疑で、患者をこの病院に紹介していたとされるブローカー2人を医療法違反の容疑で在宅のまま送検した。
さらに、手術に関与していた医療スタッフ4人に対しても、殺人ほう助の疑いで捜査が継続されている。
(記事提供=時事ジャーナル)
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