一人当たり最大5万5000円を“支援” 韓国政府の消費クーポンは不公平?不満の声が懸念されるワケ

2025年07月02日 政治 #時事ジャーナル
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韓国国民1人あたり、15万ウォン(約1万6000円)から最大52万ウォン(約5万5000円)が支給される「民生回復消費クーポン(民生回復支援金)」事業。

【写真】韓国の給付額は?

所得上位10%以上の国民には15万ウォン、それ以下の層にはさらに多くの金額が支給される仕組みとなっている。

政府は今回も、新型コロナウイルス災害支援金のときと同様に、健康保険料を主な基準として上位10%を選別するとみられているが、国会予算のシンクタンクは懸念と警告を示している。

民生回復支援金は消費促進が目的で、全韓国国民を対象として1人あたり15万~52万ウォン相当のクーポンを支給する事業。所得上位10%には15万ウォン、一般国民には25万ウォン(約2万6000円)、一人親家庭および次上位階層には40万ウォン(約4万2000円)、基礎生活保障受給者には50万ウォン(約5万3000円)が支給される。農村・漁村地域に住む者には、それぞれの金額に加えて2万ウォン(約2000円)が上乗せされるという。

国会予算政策処は最近発表した「2025年度第2次補正予算案分析報告書」で、次のように指摘した。

「選別基準として適用される予定の健康保険料には、加入者の種類(職場加入者・地域加入者)や同一カテゴリー内での職種・世帯の特性により多様な変数が存在するため、実質的な所得や資産の反映には限界がある。そのため、国民の“納得感向上”のためにも、より説得力と精度を兼ね備えた選別基準と補完策を設ける必要がある」

同じ枠でも6万ウォンの差…

李在明大統領
(写真=大統領室通信写真記者団)民生回復消費クーポンを推し進める李在明大統領

なぜこのような懸念が出ているのか。現在、韓国の健康保険制度では「職場加入者」と「地域加入者」に分かれており、それぞれ保険料の算出方法が異なる。職場加入者は、1年間の総給与額を月数で割った所得指標に基づいて算出されるが、地域加入者は所得のほかにも不動産や自動車などの資産を含めて保険料が決まる。そのため、同じ所得水準であっても地域加入者の方が高額な保険料を課されやすいという指摘が、かねてからなされてきた。

国会予算政策処は「こうした基準の違いにより、所得階層別に見た場合でも職場加入者と地域加入者とでは保険料に差が出る」とし、「政府の発表によると、2025年5月時点で所得上位10%に該当する職場加入者の基準は本人負担額が27万ウォン(約2万8000円)を超える場合、地域加入者は21万ウォン(約2万2000円)を超える場合となっている」と説明した。

つまり、職場加入者の場合、仮に給与以外に家賃収入などがあっても、その額が2000万ウォン(約210万円)を超えない限りは保険料に反映されないのだ。一方で、地域加入者の場合は金融所得や賃貸収入、保有資産評価点数などがすべて保険料に影響を与える。これにより、たとえ数億ウォン(数千万円)のビルを所有していたとしても、職場加入者は追加支給対象になりうる一方、地域加入者が小規模な商店や低価格の住宅を所有している場合には支給対象から外される可能性がある。

国会予算決算特別委員会も、検討報告書の中で「2021年の国民支援金では、所得下位80%の世帯が対象とされたが、その際には資産保有基準が別途設けられており、高額資産世帯を除外できた」としつつ、「今回の民生回復支援金は全国民が対象であるため、高額資産保有者を除外するのは難しく、支給の公平性を担保するための代替策が求められる」と述べている。

所得の“判定時点”も重要に

ほかにも、所得をどの時点で判定するかによっても、職場加入者・地域加入者の間で保険料に差が出る。常時従業員100人以上の職場加入者は直近の所得が反映されるのに対し、地域加入者は2024年の所得が基準になる。つまり、昨年まで事業を営んでいたが今年に入って廃業した人でも、保険料は高く算定される可能性があるというわけだ。

国会予算政策処は、「経済の回復を目的とした消費クーポン事業が、支援が必要な人々に届かず、むしろ高所得者が多くの恩恵を受ける構造となれば、政策の本来の趣旨が損なわれる恐れがある」とし、「政府は上位10%を選別するにあたり、健康保険料が持つ限界を綿密に検討すべきだ」と指摘している。

前回は11万件超の異議が

なお、2021年のコロナ禍における支援金支給の際には、金融資産の一定額を超えた場合は支給対象外とするなど、公平性を確保するための制度が導入されていたが、それでも異議申請は11万858件にのぼった。このうち、保険料の調整を求める申請が4万5637件(全体の41.2%)だった。今回、同様の補完措置がないまま支援金が支給された場合、当時以上の異議申請が殺到する可能性が高いと思われる。

それでも「保険料基準」が採用される理由

問題は、国税庁や金融機関が保有する所得・資産情報を連携させ、より精密に資産状況を把握しようという議論が過去にあったにもかかわらず、それが実行に移されなかった点だ。国会予算決算特別委員会は、「健康保険料を基準とし、所得上位10%を選別して支給額に差をつける場合、資産状況が反映されないことによる“公平性の問題”や、その結果として政策効果の分散が懸念される」として、今からでも対策を講じる必要があると強調した。

こうした懸念があるにもかかわらず、政府が健康保険料を基準に据えようとする背景には、効率の問題がある。

国会側は「韓国国民の大半が健康保険に加入しており、新たに行政リソースを割く必要がないという点では利点がある」と説明。国会予算政策処も「高所得層ほど実際に多くの保険料を負担しているため、支払い能力に応じた選別が可能であり、全国民が義務加入する保険制度であることから、対象に該当するかどうかを本人が把握しやすいというメリットがある」としている。

(記事提供=時事ジャーナル)

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