韓国の巨大野党が振るう「弾劾バット」が次々と空を切る様相となっている。
最大野党「共に民主党」が「内乱共犯」として弾劾しようとしたハン・ドクス大統領権限代行・国務総理が、憲法裁判所による棄却決定で息を吹き返したためだ。
これにより、「弾劾の試み30回・成功率0%」という野党陣営の不名誉な記録が続くことになった。
しかし「共に民主党」は、弾劾攻勢を緩めるつもりはないという立場だ。ハン・ドクス権限代行の弾劾棄却決定文を通じて、「マ・ウンヒョク憲法裁判官候補を任命しなかったことが違憲であることが明らかになった」とし、チェ・サンモク経済副首相を次の弾劾の標的に指名した。
ただし、野党内の一部からは「尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾に党力を集中すべき」との意見や、「連続弾劾」に対する疲労感を懸念する声も上がっている。
「内乱勢力の迅速な根絶こそが、大韓民国正常化の唯一の道だ」
「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は、2024年12月27日に国会で発表した対国民声明で、「内乱の首謀者・尹錫悦とその残党が大韓民国にとって最大の脅威だ」と述べ、上記のように強調した。
李在明代表はハン・ドクス権限代行を「内乱代行」と規定し、「共に民主党は国民の命令に従い、ハン国務総理を弾劾する」とし、「逮捕、拘禁、失踪も覚悟し、国会の塀を越えたあの夜の無限の責任感をもって、いかなる反乱と逆行も制圧する」と強調した。
しかし李在明代表の「制圧の試み」は、憲法裁判所の壁に阻まれた。
憲法裁は3月24日、ハン・ドクス権限代行の弾劾案を棄却した。裁判官8人のうち5人が、ハン・ドクス権限代行に対して提起された弾劾訴追の大部分について、憲法や法律に違反したとは見なせないと判断した。
棄却意見を出した5人のうち4人(ムン・ヒョンベ、イ・ミソン、キム・ヒョンドゥ、チョン・ジョンミ裁判官)は、ハン・ドクス権限代行が国会で選出されたチョ・ハンチャン、チョン・ゲソン、マ・ウンヒョク裁判官候補の任命を保留したことは、憲法および法律違反には該当するが、罷免を正当化する事由にはならないとした。
残る裁判官のうち2人は却下、1人は罷免すべきとする意見を出した。これによりハン・ドクス権限代行は、弾劾訴追から87日ぶりに職務へ復帰することとなった。
「共に民主党」は憲法裁の決定に不満を示した。
李在明代表は3月24日、ソウル鍾路区光化門前に設置された「共に民主党」のテント党舎で開かれた最高委員会議で、「(憲法裁の)決定を尊重せざるを得ない状況だ」としながらも、「明白に意図的に、憲法機関構成という憲法上の義務を違反したこの行為に対し、『弾劾するには至らない』という判決を国民がはたして納得できるのか疑問だ」と述べた。
彼は「私たち国民は軽犯罪でもすぐに罰金を払い処罰される」とし、「刑法の条文でも食品衛生法でも、条項を破ればすぐに制裁や処罰を受ける」と語った。その上で、「それなのに大統領権限代行が、憲法に明示された『憲法機関構成』という憲法上の義務を明確に、意図的に、悪意をもって破っても許されるのか」とし、「国民の皆さんが判断してくださると信じている」と語った。
野党内の一部では、ハン・ドクス権限代行の復帰は、尹錫悦大統領の「弾劾の号砲」になるという解釈も出ている。
憲法裁判所が今後、尹大統領を罷免するという判断を控え、「政府ナンバー2」を国政のコントロールタワーとして復帰させたという見方だ。
「共に民主党」の国会内のある核心関係者は「ハン・ドクスが戻ってきたことで、尹大統領の弾劾時に懸念されていた国政の空白の懸念は、むしろ解消された」と評価した。
野党の次期大統領候補の一人であるキム・ドンヨン京畿道知事もフェイスブックで、ハン・ドクス権限代行の弾劾案が棄却されたことについて「尹錫悦弾劾に先立つ、事前の国政安定措置だ」と主張した。
これを受け「共に民主党」は、「ハン・ドクス復帰」を足がかりに、チェ・サンモク経済副首相の弾劾を加速させる方針だ。
「共に民主党」は、ハン・ドクス権限代行の弾劾棄却決定文を根拠に、チェ・サンモク副首相の弾劾理由が一層明確になったと主張している。ハン・ドクス権限代行が国会で選出された憲法裁判官3人の任命を行わなかったことが違憲とされた以上、チェ・サンモク副首相が権限代行時にマ・ウンヒョク候補を任命しなかったことも違憲であるという主張だ。
チョ・スンレ首席報道官は、前日に国会で記者団に対し「憲法裁は本日、権限代行の弾劾議決に必要な定足数が在籍議員の過半数であること、大統領またはその代行が国会で選出された憲法裁判官候補を任命しなかった行為が違憲・違法であることを明示した」と述べ、「これにより、すでに発議されたチェ副首相の弾劾は今後も手続きを進めていくことは明確だ」と語った。
復帰したハン・ドクス権限代行が、今後もマ・ウンヒョク候補の任命を行わない場合に再び弾劾を推進するかとの質問には、「現時点では断定できない」と答えた。
ただし、与党のみならず野党内部からも、現政権下で30回目となる「連続弾劾」の実効性に対する懸念が少なくない。
弾劾の成功率が低いために、本来の趣旨が薄れ、その効果も弱まっているという指摘がある。
これまで「共に民主党」主導で国会を通過した弾劾案は13件あり、そのうち9件が憲法裁の判断まで進んだが、弾劾が認められたのは0件だ。こうした状況から、「共に民主党」の弾劾の試みが政治的手段としてのみ利用されているのではないかという批判も出ている。
与党「国民の力」のクォン・ソンドン院内代表は、3月24日の記者会見で「ハン代行に対する弾劾棄却は、“共に弾劾党”の『9戦9敗』というレベルを超える意味がある」とし、「李在明勢力による立法権力を使った内乱陰謀に、憲法の鉄槌が下された」と主張した。
「共に民主党」のある再選議員は、「憲法を踏みにじった者を弾劾するのは政党の義務であり、それを傍観せよというのは内乱への同調と同じだ」と語りつつも、「ただ、『今は尹大統領の弾劾にもっと集中すべきではないか』『弾劾の本来の趣旨とは違って、国民の疲労感ばかりが高まるのでは』という一部の懸念があるのも事実だ」と明かした。
一部では、大統領選の早期実施を念頭に準備していた「共に民主党」が、再び「弾劾の手綱」を締め始めたのは、「焦りの表れ」だという見方も出ている。
憲法裁による尹錫悦大統領の弾劾審理が長期化するなか、李在明代表の「選挙法違反控訴審」の判決が翌日(3月26日)に迫り、「共に民主党」が出せるあらゆる「攻撃カード」を切り始めたという分析だ。
会計士のキム・ギョンユル氏は、前日に出演した『時事ジャーナルTV』で、「共に民主党」がチェ・サンモク副首相の弾劾案を発議したことについて、「“焦り”の三文字以外に説明のしようがない」と述べ、「弾劾をすればするほど共に民主党に不利になることは誰もがわかっているが、李在明代表の首元に迫る司法審判のためにこうするしかないのだろう」と主張した。
一部では、「共に民主党」による「チェ・サンモク弾劾」が、同党の重鎮であるウ・ウォンシク国会議長によって阻止される可能性も取り沙汰されている。
弾劾案は本会議で報告されてから、24時間以降72時間以内に採決されなければ自動的に廃案となるため、2回連続で本会議を開く必要がある。現在予定されている本会議は3月27日で、このときチェ・サンモク副首相の弾劾案が報告されれば、採決のための次の本会議を近日中に開催しなければならない。
しかし、本会議を開く権限を持つウ・ウォンシク議長が、チェ・サンモク副首相の弾劾に否定的であることが伝えられている。
(記事提供=時事ジャーナル)
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