球春到来。日本では3月25日のプロ野球開幕に向けて、各地でオープン戦が行われているが、韓国プロ野球も新シーズン開幕に向けて徐々に盛り上がりを見せている。韓国プロ野球は4月1日に開幕するが、韓国でも各球団がオープン戦を戦いながら新戦力のチェックに余念がない。
新戦力の中で特に注目を集めているのは、各球団の外国人選手だ。
例えばハンファ・イーグルスに入団したウィリン・ロサリオ。コロラド・ロッキーズなどで5年間メジャーリーグで活躍し通算71本塁打を放った彼は“怪物打者”としてその活躍が期待されているし、KIAタイガースが170万ドルで契約した右腕へクター・ノシエもシカゴ・ホワイトソックスなどでプレー経験があることもあって、注目が高い。韓国プロ野球界には今季、10球団合計13人の新外国人選手がやってきているが、近年は外国人選手のトレンドも変わりつつあるという。
古くはタイロン・ウッズ(元横浜、中日)やセス・グライシンガー(元ヤクルト、巨人、ロッテ)などから始まり、最近ではリック・バンデンハーク(ソフトバンク)、今季もアンディ・バンヘッケン(埼玉西武)、ヤマイコ・ナバーロ(ロッテ)など、韓国プロ野球を経由して日本球界にやってくる外国人選手も増えているだけに、今から韓国球界の外国人選手の動向をチェックしておくのも面白いかもしれない。
もっとも、韓国プロ野球と日本プロ野球とではまだまだ差が大きいのも事実だ。
端的な例が選手の平均年俸だろう。昨年5月に労組日本プロ野球選手会が発表した2015年度の平均年俸(外国人選手、育成選手など除く)は3811万円だったが、韓国KBO(韓国野球委員会)が今年2月に発表にした平均年俸(新人と外国人選手は除く)は1億2656万ウォン(約1211万円)。日本球界のほうが韓国球界よりも3倍近く高い。
韓国球界の各球団上位27人(外国人選手を除く)の平均年俸でも2億1620万ウォン(約2069万円)。プロ野球創設時(1982年)の平均年俸と比べると18倍近くになるというが、それでも日本の平均年俸には及ばないのだ。
最高年俸者も日本のほうが高い。韓国はかつてロッテでもプレーしたことがあるハンファ・イーグルスの強打者キム・テギュンの年俸16億ウォン(約1億5300万円)が5年連続のトップの座にあるが、日本は広島の黒田博樹が推定6億円。キム・テギュンの年俸では日本のベスト10どころか、ベスト30にも入らないというのが現実だ。
こうした韓国球界の年俸状況を受けて、『聯合ニュース』が「韓米日プロ野球の最高年俸経済学、どれだけ違いがあるか」と題した特集記事を掲載したこともある。
それによれば、1982年の韓国プロ野球最高年俸は2400万ウォン。
当時のアメリカ・メジャーリーグの最高年俸はその75倍、日本プロ野球はその30倍も高かったという。ところが、「2016年、KBOではキム・テギュンが16億ウォンで1位、MLBはザック・グリンキーが約3400万ドル(約420億ウォン)、NPB(日本プロ野球)は黒田博樹が6億円(約65億ウォン)。グリンキーはキム・テギュンの26倍、黒田は約4倍多い」というわけだ。
とはいえ、韓国球界が日本はもちろん、アメリカと比べるのはいささか無理があるだろう。日米と韓国ではプロ野球の歴史の積み重ねも異なるし、その国力を示すGDP(国内総生産)も異なる。日本は韓国の3倍、アメリカに至っては韓国の13倍の経済規模を誇るのだ。それを踏まえると、むしろ韓国プロ野球の規模が30年前に比べ、日本やアメリカとの距離をかなり縮めてきたと見るべきかもしれない。実際、韓国球界の年俸額は急速なスピードでアップしているのだ(格差も生じているようだが…)。
ちなみに、韓国プロ野球の“華”と言えば、各球団専属のチアリーダーたち。
彼女たちの平均月給は200万ウォン(約20万円)ほどで、5~6年目でも年俸は2500~3000万ウォン(約250万~300万円)程度だという。韓国にはパク・キリャンなどタレント化しているチアリーダーも多いが、その年俸は例えば日給制と言われる巨人の「ジャイアンツヴィーナス」よりも高い。チアドルの年俸では韓国プロ野球のほうが優遇されているかもしれない。
いずれにしても日本と韓国のプロ野球との間には、まだまださまざまな違いがある。日本では「日韓対決」と言えばサッカーが連想されがちだが、野球でも日韓は互いに譲らない勝負を演じてきた。少なくとも韓国は日本野球を意識し、比較対象にもしているのは間違いない。
(文=慎 武宏)
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