韓国史の「一流講師」として知られるチョン・ハンギル氏が最近の弾劾政局で政治的な発言を強め、保守陣営の代弁者へと変わった。
特に、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾に積極的に反対する立場を表明し、注目を集めている。
彼の発言を「痛快だ」と支持する人々もいる一方で、彼の講義を受けている受験生の間では「本業である講師業が疎かになっているのではないか」という懸念の声も上がっている。
一部では「政治的な野心を持ち、このような転身を図ったのではないか」と疑う声もあるが、チョン氏は「政治には関心がない」と否定している。
チョン氏が本格的に政治的な発言を始めたのは2024年12月3日、尹大統領の非常戒厳令発令以降だった。彼はこれを「啓蒙令」と呼び、尹大統領の弾劾訴追の不当性を強調した。
この発言は単なる意見表明を超え、保守支持層を結集する効果をもたらした。弾劾政局の中で、多くの保守系政治家が慎重な立場を取るなか、チョン氏はメディアのインタビューや自身のYouTubeチャンネルを通じて、尹大統領を積極的に擁護するメッセージを発信した。
その後、保守系キリスト教団体「SAVE KOREA」が主催する尹大統領弾劾反対集会にも演説者として登壇し、政治的影響力をさらに拡大させた。
チョン氏の政治的立場がより鮮明になった背景には、最大野党「共に民主党」の告発が転機になったとの分析がある。
1月19日、チョン氏はYouTube動画で「韓国の混乱は選挙管理委員会が招いた」と主張し、選挙に関する疑惑を提起した。すると、野党はチョン氏が「内乱扇動」をしているとして法的措置を取る方針を明らかにした。
これに対し、チョン氏はさらに強硬な保守的立場を打ち出した。実際、告発を受けた直後には「気に入らないからといって告発するのか。国民を家畜のように扱っている」と強い口調で「共に民主党」を批判した。
保守支持層の間では、彼の率直な政治的発言が、従来の慎重な政治家の姿勢とは対照的だとして、新鮮だという評価が出ている。
それを裏付けるように、チョン氏が運営するYouTubeチャンネル「花よりチョン・ハンギル」の登録者数は、2月20日10時時点で126万人を突破した。これは1月19日時点での57万人から、わずか1カ月で2倍以上に増加したことになる。
その一方で、チョン氏の講義を受ける受験生たちの間では、彼が政治活動よりも学習コンテンツの制作に集中してほしいという声が上がっている。
チョン氏の受講生たちが集まるオンラインコミュニティサイト「チョン・ハンギル韓国史」には、「国家公務員試験まで60日しかないのに、受験用のサイト管理がされていないのは不満だ」「不正選挙を確信しているようだが、実務に関わる人々に直接意見を聞いたことはあるのか」といった抗議の投稿が寄せられている。
チョン氏の意図に関わらず、彼の政治的発言が韓国社会に与える影響はすでに相当なレベルに達しているとの評価も出てきた。
専門家たちは、チョン氏のような人物が政治の枠外から声を上げることが、新たな政治文化の始まりとなる可能性を指摘している。しかし、「尹大統領暗殺説」といった根拠のない扇動的な発言をするようになれば、社会的分裂を招くだけだという懸念も出ている。
嶺南(ヨンナム)大学社会学科のホ・チャンドク教授は、「既存の政治家が有権者の声を適切に代弁できないと国民が判断すれば、第2、第3のチョン・ハンギルがいつでも登場する可能性がある」と指摘し、「政治家たちは社会統合に向けた役割により注力すべき時期に来ている」と述べた。
(記事提供=時事ジャーナル)
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