「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)大統領候補による「コーヒー1杯の原価は120ウォン(約12円)」発言をめぐり、議論が大きくなっている。
ネガティブな攻勢が相次いだことを受け、党としての法的対応が展開されている。「共に民主党」は「虚偽や歪曲には厳格に対処する」と応じた一方で、「国民の力」も対抗して告訴を予告し、法的対応に踏み切る構えを見せている。
「共に民主党」の公正選挙法務支援団は5月19日、李在明候補の「コーヒー原価120ウォン」発言に異議を唱えた「国民の力」のキム・ヨンテ非常対策委員長を、虚偽事実の公表容疑でソウル地方警察庁に告訴する予定だと明らかにした。
これに対し、「国民の力」も同日、李在明候補の発言がカフェ経営者に対する名誉毀損にあたるとして、刑事告訴を行うと発表した。「国民の力」は当初、「共に民主党」による告訴に対して、誣告・虚偽事実の流布による公職選挙法違反だとして「対抗告訴」する方針を明かしていたが、そこに名誉毀損の容疑まで追加したわけだ。
「国民の力」ネガティブ団のチェ・ギシク、チュ・ジヌ共同団長は、報道発表を通じて、「李在明候補は『コーヒー1杯を売れば8000~1万ウォン(約800~1000円)になるが、原価は自分が調べたところ120ウォンだった』と発言し、自営業者たちの厳しい現実を無視していることが露呈した」と批判した。
続けて、「その後、自身の妄言に対する自営業者からの批判が高まると、発言の趣旨を否定し、キム・ヨンテ非常対策委員長を告訴することで騒動を覆い隠そうとした」と主張した。
これに先立ち、李在明候補は5月18日の大統領選討論会で、この発言について、「発言には文脈というものがある」とし、「2019年春ごろにはコーヒーの原材料費が約120ウォンだったのは事実だ。ただし人件費や設備費は含まれていなかった」と述べた。
また「新たにお粥を作って売るよりも、より良い環境で営業することを支援するという趣旨だった」と述べ、「国民の力は何でも極端に決めつけ、前提を歪めて質問や主張をしている」と反論した。
政界では、「国民の力」のネガティブ攻勢に対し、告訴で応じた「共に民主党」の対応が、党が推進中の「公職選挙法改正案」と矛盾しているとの指摘も出ている。
「革新新党」のイ・ジュンソク大統領候補は前日のTV討論会で、「共に民主党は虚偽事実の公表に関して『行為』の部分を削除しながら、キム・ヨンテ議員が李在明候補の発言に補足的に言及したことを歪曲だとするのはどういう理屈なのか」と問い、「公職選挙法は、李在明候補は告訴してはならず、キム・ヨンテはしていいということか」と皮肉った。
これに対し「共に民主党」は、現行の公職選挙法の条項が有効である限り、法的対応を続けていくという立場だ。先に国会法制司法委員会は5月14日、虚偽事実公表罪の要件から「行為」の文言を削除する内容の選挙法改正案を「共に民主党」主導で可決し、本会議に付託した。「共に民主党」は「公職選挙法上の虚偽事実公表罪は、表現の自由を過度に制限する」として、改正の必要性を主張している。
一部では、この改正案が李在明候補の選挙法違反事件と関連しているとの見方もある。最高裁が李在明候補の選挙法違反事件について、有罪の趣旨で差し戻した状況下で、仮に改正案が国会本会議を通過して公布されれば、李在明候補は「免訴」(法令が廃止され、処罰できなくなる)判決を受ける可能性があるからだ。
なお、「共に民主党」は大統領選の局面で「虚偽・歪曲」のネガティブ攻勢に明確に対抗する方針だ。
「共に民主党」法務支援団は最近、「国民の力」のパク・ジョンフン議員がフェイスブック上で、李在明候補を「破棄差戻審の期日通知書の受け取りを遅らせるために姑息な手まで使う人物」と批判した内容についても、虚偽事実の公表容疑で告訴した。
さらに5月6日には、ハン・ドクス前首相がメディアとの討論会で、「李在明代表も“光州事態”という表現を使った」と発言したことについても、同じ容疑で告訴している。
李在明候補自身は、この過程で直接対応には出ていない。最近の各種世論調査で李在明候補が支持率トップを維持している状況のなか、不要な論争に巻き込まれる必要はないという慎重論が働いていると見られている。
地域遊説を続ける李在明候補は、国民統合や未来ビジョンの提示に集中し、候補者への攻撃については党が法的に対応するという方針が共有されている。
(記事提供=時事ジャーナル)
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