数億円の詐欺や横領でも「執行猶予」…経済犯罪が急増する韓国、被告人の量刑はこのままでいいのか

2024年11月24日 社会 #時事ジャーナル
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#1. 釜山(プサン)海雲台区のマンションで夫婦の集まりを運営していたA氏の口座に2014年12月、275万ウォン(約30万円)が振り込まれた。

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「弟が経営する美容室に通う飲食店の従業員にお金を貸せば利息を得られる」という言葉に騙された被害者C氏が送金したものであった。生活費や店舗の運営費を捻出する程度のつもりでついた嘘だったが、A氏の犯行は次第に大胆になった。

信頼を維持するため、実際に利息を支払いながら借入金を返済する形をとり、口座の名義を次々と変更しながら、C氏から3年間で181回にわたり8億7200万ウォン(約9600万円)を騙し取った。

最終的にA氏は裁判にかけられることになったが、彼は収監されることはなかった。懲役2年6カ月、執行猶予3年が言い渡されたためだ。3億1300万ウォン(約3400万円)を返済した点、同種の前科がない点、事件の罪をすべて認めた点などが減刑要因として考慮された。

#2. とある企業で財務のチーム長として働いていたB氏は、2017年1月から2020年11月までの間に194回にわたって会社の資金を横領した。会社の口座や従業員持株組合の口座を管理する職務権限を悪用し、不正に流用した金額は14億ウォン(約1億5400万円)に上った。

横領した資金の大部分を海外先物投資に浪費し、被害金額の半分ほどしか返済できなかった。B氏は1審で懲役3年6カ月を宣告されたが、同種の前科がない点が考慮され、2審では6カ月減刑された。

このように、数億ウォンから数十億ウォン規模に及ぶ経済犯罪は、その手口や種類が千差万別だ。複数回にわたり長期間にわたって行われ、被害者に取り返しのつかない財産上の被害をもたらすという共通点もある。しかし、それに比べて処罰の程度は相対的に軽い場合が多く、厳罰化の必要性が指摘されている。

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裁判
(写真=Pexels)

『時事ジャーナル』が今年1月から10月までに、特定経済犯罪加重処罰法(以下、特経法)違反で懲役刑が言い渡された判決文311件を分析した結果、被告人たちが受けた平均刑期は3.08年に過ぎなかった。

これは、最低懲役3年と規定された特経法の下限をわずかに上回る水準だ。被告人が複数いる場合は、最も重い刑を受けた件だけを集計した。

特経法は、一定額以上の規模で発生した詐欺、横領、背任などの特定経済犯罪に対し、刑法よりも重い処罰を課す法律だ。最も代表的な詐欺、横領、背任の場合、犯罪金額が5億ウォン(約5500万円)以上50億ウォン(約5億5000万円)未満であれば懲役3年以上、50億ウォン以上であれば無期懲役または懲役5年以上とする加重処罰が規定されている。

詐欺を例にとれば、現行刑法は一般的な詐欺犯罪について懲役10年以下または罰金2000万ウォン(約220万円)以下と規定しているが、特経法が適用されるとこれよりも厳しい処罰を受けることになる。

調査の結果、特経法違反が適用された罪状の大半は詐欺であった。適用された罪状329件のうち225件で、全体の68.3%を占めた。横領が73件で続き、背任が18件、収賄・恐喝・高利貸し斡旋などその他の罪状が13件だった。この結果、総犯罪規模は6389億7000万ウォン(約703億4700万円)に上った。

詐欺の規模が3849億7000万ウォンと半分以上を占め、横領・背任の規模も2419億2000万ウォンで、詐欺事件を除けばほぼ大半を占めた。

金額の使用目的が記載された被告人241人のうち、163人(67%)は犯罪で得た金を個人の消費目的で使用していた。個人消費には主に生活費、債務の返済、贅沢品の購入などが含まれていた。賭博や遊興に犯罪収益を使用した被告人は33人(13.6%)、株式や暗号資産、不動産投資などに使用した被告人は25人(10%)だった。

ただし、判決文に「個人消費目的」と記載されている場合には、実際には投資目的で犯罪収益を使用したケースも多く含まれると考えられ、実際の投資目的の割合はこれより多いと推定される。

犯罪が長期間続いたり、複数回にわたって行われたりしたケースも多い。判決文に犯罪期間や回数が明示されているもののうち、被告人が1年以上犯罪を続けた事例は71件あった。また、30回以上繰り返し行われたケースも70件に上った。

被告人が金を使い果たしてしまい、被害回復が困難な場合も多かった。判決文で「被害額の返済が十分でない」と言及された被告人は112人だった。一方で、被害回復の努力が十分であり、これが有利な量刑要素として考慮され減刑された被告人は96人だった。

このように、被害額が数億ウォン規模で、かつ被害が回復されないケースが多いにもかかわらず、処罰は相対的に寛大だった。懲役刑を言い渡された被告人311人のうち、109人は執行猶予も併せて宣告されていた。特経法では法定最低刑が懲役であるにもかかわらず、被告人の約3人に1人は実際に刑務所行きを免れていることになる。

たとえ刑務所に行ったとしても、その期間は短い傾向にあった。これは、最高裁判所の量刑基準に照らしても、刑期が最低基準に近いためだ。

犯罪金額別に分けてみると、詐欺・横領・背任の被害額が5億ウォン以上50億ウォン未満の場合、平均刑期は2.9年だった。最高裁量刑委員会は被害額を基準に分類し、量刑基準を設けているが、詐欺の場合、この区間の基準刑は懲役3~6年だ。横領・背任は懲役2~5年を基準としている。これを考慮すると、平均刑期2.9年は基準刑の下限に近い水準といえる。

犯罪規模が50億ウォンを超えても結果は同様だった。この金額区間で被告人が受けた平均刑期は5.2年だった。量刑基準によれば、被害額50億ウォン以上300億ウォン(約33億円)未満の詐欺に対しては、懲役5~8年が基準刑とされている。横領・背任の場合、この区間の基準刑は懲役4~7年だ。犯罪規模が大きくなっても、基準刑の下限に近い判決が下される点は変わらない。このことが、経済犯罪に対する処罰が軽すぎるのではないかという指摘の理由となっている。

弁済すれば刑務所には行かない

刑務所
(写真=Pexels)

もちろん裁判所は、被告人の量刑を決める際に複数の要因を合理的に考慮している。

量刑の範囲を決定する代表的な基準が「特別量刑因子」である。特別量刑因子とは、量刑のために特別に指定された要素を指す。一般的な量刑の減軽・加重要素以外にも、事件の具体的かつ特殊な事情を反映するために設定された基準だ。

例えば、詐欺犯罪では、被害者が処罰を望まない場合や実質的に被害が回復された場合などが減軽要素として適用され、一方で、被害者に深刻な被害をもたらした場合や常習犯の場合は加重要素として量刑の範囲が決定される。

数億ウォンを騙し取ったにもかかわらず執行猶予に留まる事例が多いのは、こうした要素が適用されたためだ。

実際、2019年にある会社で経理として働いていたD氏は、代表取締役から名義信託を受けて保管していた株式94億ウォン(約1億円)のうち6億ウォン(約6600万円)分を売却し、生活費や不動産投資に使用した。また、配当金1億2000万ウォンも無断で使用した。

その後、D氏が被害者からの株式返還要求を拒否し、株式全体を違法に取得する意図があったと裁判所で認定された。しかしD氏は懲役3年、執行猶予4年の判決に留まった。民事訴訟を通じて被害額の3分の2が回復され、結果的に株式全体が返還された事実が特別量刑因子として考慮されたためだ。

犯罪規模の違いが大きくても量刑が似ているのも同じ理由である。

今年、ソウル高等裁判所では、被告人E氏が被害者26人から33億ウォン(約3億6000万円)を騙し取った容疑で懲役4年の判決を受けた。一方、今年、光州地方裁判所では6億ウォン(約6600万円)を騙し取った容疑で起訴された被告人F氏も、同じく懲役4年の判決を受けた。

両事件の被害金額は5倍以上の差があるにもかかわらず、量刑は同じだ。E氏は4億ウォンを弁済した点が情状酌量された一方で、F氏は娯楽やギャンブルで犯罪収益をすべて使い果たし、被害回復が難しい点が不利に働いた。

法務法人シウ釜山事務所のイ・ヨンミン弁護士は「法定刑の下限に近い判決が出されたり執行猶予が判断されたりしたのは、合意や供託といった減軽要素、過去の判例などが総合的に考慮されたためとみられる」とし、「絶対的な金額だけでなく個別の事件の具体性を精査する必要がある」と説明した。

ただし、量刑基準を機械的に適用した結果、軽い処罰が続いているとの指摘もある。匿名を求めたある法学専門大学院教授は「特別経済犯罪加重処罰法は刑法に比べて加重処罰する法定刑が設定されているが、実務的に量刑基準内で処理されることが多く、傾向的に見ると処罰が軽く見える場合がある」と述べた。

問題は、最近になって大小の経済犯罪が急増している点である。警察庁の犯罪統計によると、2023年の詐欺、横領、背任を含む知能犯罪の発生件数は、過去5年で最高値を記録した。発生件数は2020年から2021年にかけて42万4642件から36万1107件まで減少していたが、2022年には40万5105件に増加し、2023年には43万2525件とさらに約3万件増加した。

経済犯罪者の増加…最高裁も処罰を強化

犯罪者の検挙件数も増加傾向を見せている。

2021年に21万5471件だった知能犯罪の検挙件数は、2023年には24万3310件まで増加した。検挙人数も同期間に21万381人から24万1954人へと3万人以上増加した。

単純に件数が増えただけではない。経済犯罪の深刻性も浮き彫りになっている。

大検察庁の検察統計システムによると、2023年に経済犯罪で起訴処分を受けた被疑者数は9604人で、2022年(7091人)に比べて2513人増加した。起訴処分とは、犯罪事実が重大な場合に検察が裁判所に正式裁判を請求することだ。つまり、裁判所の調査と審理が必要なほど重大な経済犯罪事件が増加しているという意味である。増加する経済犯罪の傾向を考えると、これに対する処罰を強化すべきとの声が高まる理由だ。

最高裁の量刑委員会も最近、経済犯罪に対する量刑基準を強化することを決定した。

量刑委員会は今年8月に開かれた第133回全体会議で、詐欺犯罪の量刑基準修正案を策定した。5億~50億ウォン未満および50億~300億ウォン未満の区分で、基本刑量の上限を引き上げ、組織的な詐欺については無期懲役も判決できるよう勧告刑量に含めた。量刑委員会が基準を見直すのは13年ぶりだった。

また、減軽要素としていた「実質的被害回復(供託を含む)」および「相当な被害回復(供託を含む)」から「(供託を含む)」という文言をすべて削除することも決めた。被害者の意に反した突然の供託で刑が軽減される点についての指摘を受けた措置といえるだろう。

量刑委員会は公聴会と意見収集手続きを経て、来年3月に修正された量刑基準を最終決定する予定だ。

(記事提供=時事ジャーナル)

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