日本による植民地支配時代の慰安婦被害者に対する賠償責任を韓国の裁判所が認めた判決が確定した。
これは韓国で3例目となる。
日本政府は控訴期限である5月14日までに、1審を担当した清州(チョンジュ)地裁に控訴状を提出しなかった。
清州地裁・民事7単独(イ・ヒョドゥ判事)は、慰安婦被害者である故キル・ガプスンさんの息子キム・ヨンマン氏(69)が日本政府に対して提起した損害賠償請求訴訟で、請求額2億ウォン(約2000万円)を全額認めた。
ただし相続人が2人いることから、日本政府がキム氏に対し半分の1億ウォン(約1000万円)を支払うよう命じた。
キル・ガプスンさんは1924年に全羅北道で生まれ、1941年に17歳で日本の長崎に強制連行され、慰安婦として生活させられた。
村から娘1人を強制的に徴発した、いわゆる「処女供出」と呼ばれる制度を逃れるため、戸籍上で結婚したように装ったが発覚し、日本軍により連行され、約4年間を過ごしたとされる。生前には「日本軍との性交を拒んだため、熱したコテで背中を焼かれる拷問を受けた」と証言していた。
日本は主権国家として、他国の裁判を受けないという国際慣習法上の「国家免除」原則を主張し、韓国国内の慰安婦関連訴訟に一貫して応じてこなかった。今回の訴訟でも訴状の受け取りを拒否し、一切の対応を行わなかったため、裁判所は公示送達の手続きを通じて審理を進めた。
裁判所は判決で、「国際慣習法においても、反人道的な犯罪行為によって人類の普遍的な価値規範を侵害した場合には、例外が認められるべきである」とし、韓国の裁判権を明確に認めた。
イ判事は「国家免除理論は国際秩序の変動により常に修正されており、恒久的な価値とは言い難い。国連条約などの国際的規範でも一定の場合には、国家に対する裁判権が免除されていない」と説明した。
さらに「当時の国際条約や一般的な国際慣習法を総合的に見れば、被告の行為は違法であり、国際裁判管轄権は併存し得る。ゆえに本件が被告と密接な関連性を持っていたとしても、大韓民国の裁判権が当然に排除されるとはいえない」と判断した。
韓国の裁判所が日本に対し、慰安婦被害者や遺族への賠償責任を認めたのは今回が3例目だ。
ただし、キム氏が実際に日本政府から損害賠償金を受け取れるかは不透明だ。
先立って、第一次損害賠償訴訟で勝訴した慰安婦被害者らは、2021年4月、日本政府に対して財産開示を請求したが、棄却された。財産開示は、裁判所が債務者に対して自身の財産を明らかにするよう命じる制度だ。
当時、日本政府は財産目録の提出および出廷命令に応じず、最終的に裁判所は「公示送達以外に送達手段がない」と判断した。民事執行法上、財産開示手続きは公示送達で行うことができない。
財産開示ができない場合、裁判所に債務者の財産を直接調査してもらう「財産照会申請」も可能だが、日本政府が無反応を貫いている以上、実際に差し押さえ等によって賠償金を得られるかは依然として不透明だ。
なお、今回の判決が確定した前日の5月14日には、別の慰安婦被害者であるイ・オクソンさんの葬儀が京畿道で行われた。遺族や慰安婦被害者支援施設「ナヌムの家」の関係者、京畿道庁の職員ら約40人が参列し、故人の旅立ちを見送った。
「ナヌムの家」で暮らしていたイ・オクソンさんは、健康上の理由で2023年3月から城南(ソンナム)市の療養病院で療養していたが、2024年5月11日20時5分、享年97歳でこの世を去った。
(記事提供=時事ジャーナル)
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