イングランド・プレミアリーグ(EPL)のトッテナム・ホットスパーが危機的な新年を迎えている。
2025年に入り、ニューカッスル(1-2で敗北)、アーセナル(1-2で敗北)に立て続けに敗北したトッテナムは、1月20日にアウェイで行われたリーグ16位エバートンとの2024-25シーズンEPL第22節でも2-3で敗れた。
リーグ戦の直近6試合連続で勝利がなく(1分5敗)、勝ち点24にとどまり、現在15位に沈んでいる。
最近10試合に範囲を広げても、成績は1勝2分7敗と最悪の状況だ。自然と降格の危機が現実味を帯びる形となっている。
降格圏に位置する18位のイプスウィッチ・タウンとの勝ち点差は8点。現在の不振を断ち切れなければ、降格圏に転落しないとは言い切れない状況だ。4試合連続で2失点以上を喫する不安定な守備力に加え、負傷者が続出しており、不振に拍車をかけている。
アンジェ・ポステコグルー監督に対するファンやメディアの反応も徐々に厳しさを増している。
スコットランドの名門セルティックFCで成果を上げ、2023年夏にトッテナムの監督に就任したポステコグルー監督は、就任1年目に5位という成績を収めた。前シーズンに8位に転落していたトッテナムにとっては3つ順位を上昇させ、ヨーロッパリーグ出場権まで獲得した監督に信任を寄せていた。
ところが、2年目となる今シーズンに急激な低迷が始まった。夏の移籍市場では、クラブ史上最高額となる約960億ウォン(約104億円)を投じてフォワードのドミニク・ソランケを獲得するなど、2100億ウォン(約229億円)以上の資金を投入した。
しかし、その資金活用が効率的でないという批判を受けており、特に若い選手ばかりを獲得したことが問題視されている。その中には冬に加入した韓国人の有望株ヤン・ミンヒョクも含まれている。
現在よりも将来を重視したチーム構成が、負傷者の続出と相まって問題を引き起こした。さらに、戦術面でプランBが準備されていないなかで不振が始まったため、低迷が加速している。
ソン・フンミンが入団する前の2007-08シーズンに11位を記録して以来、EPLで10位圏外に落ちたことのないトッテナムにとって、危機感が高まらざるを得ない。
2015年夏にトッテナムに入団したソン・フンミンも、10年目にして初めての経験をしている。彼が加入して以降、トッテナムは3位、2位、3位、4位、6位、7位、4位、8位、5位と成績を残してきた。特に2016-17シーズンにはチェルシーやマンチェスター・シティと熾烈な優勝争いを繰り広げ、EPL史上最高成績である準優勝を達成した。
また、2018-19シーズンにはチャンピオンズリーグ決勝に進出し、ヨーロッパチャンピオンの座を目前にした。しかし、リヴァプールに敗れて惜しくもタイトルを逃した。この時、ソン・フンミンとハリー・ケインは驚異的なコンビネーションプレーを見せ、21世紀におけるトッテナムの最盛期を象徴する瞬間となった。
その後、EPLは従来のビッグ6(マンチェスター・ユナイテッド、リヴァプール、アーセナル、チェルシー、マンチェスター・シティ、トッテナム)に加え、ニューカッスル、アストンヴィラ、ウェストハムといった新たなオーナーの全面的な支援を受けたチームが加わり、競争が激化した。
しかし、トッテナムが現在のような危機に直面するとは誰も予想していなかった。
トッテナムのダニエル・レヴィ会長は黒字経営に重点を置き、主力選手が高額な給与を要求すると放出し、移籍金収入よりも安価な選手で代替する運営方針を続けてきた。1400億ウォン(約152億円)の移籍金でバイエルン・ミュンヘンに移籍したハリー・ケインがその代表例だ。
こうした状況のなかで、トッテナムに献身してきた選手はトロフィーも給与も得られない状態が続いている。その典型例がソン・フンミンだ。彼はアーセナルとの北ロンドンダービーで敗れ、トッテナムが13位に転落した際、「とても戸惑っており、つらい。10年間ここにいたが、このような順位は初めてだ」と絶望感を示した。
降格争いはソン・フンミンが最も避けたい状況だ。2010年にプロキャリアをスタートさせて以来、彼が残留争いを経験したのは一度だけだ。それはドイツ・ブンデスリーガのハンブルクSVに所属していた2011-12シーズンのことだった。
当時、ハンブルクは20歳のソン・フンミンが決めた終盤の連続ゴールのおかげで、リーグ15位を記録し、辛うじて残留に成功した。
ポステコグルー監督の指導力やレヴィ会長の頑固な経営方針が招いたトッテナムの不振は、思わぬところに飛び火している。チームが不振に陥ると、キャプテンのソン・フンミンに責任を押し付ける過激な意見が強まった。
エバートン戦での敗北が引き金となり、この試合でソン・フンミンは前半24分にデヤン・クルセフスキーが作った決定機を外してしまい、BBCから「愚かなフィニッシュ」と酷評された。その後、トッテナムは前半だけでさらに2失点を喫し、後半に追撃を試みたものの、2-3で敗れた。
後半の反撃を引っ張ったのは2007年生まれの若手ウィンガー、マイキー・ムーアだった。後半27分に途中出場したムーアは積極的なプレーを見せ、追加タイムにチームの2点目となるリシャルリソン・デ・アンドラーデのゴールをアシストした。若手選手の活躍が一筋の希望となったことは良かったが、その後の反応は意外なものだった。
トッテナムのアウェイファンはソン・フンミンに対し、「17歳の選手にポジションを譲れ」「もう出て行け」と暴言を浴びせたのだ。
このような反応はイギリス現地でも大きな話題となった。10年間にわたり他チームからの誘いを断り、トッテナムに献身してきたソン・フンミンに現在の不振の責任を負わせる形となったからだ。
一部のファンからは「監督がソン・フンミンの影響力の大きさを恐れてムーアを使えない」という根拠のない批判まで浴びせられた。メディアはむしろ、こうした無分別な一部のトッテナムファンの反応を批判している。スポーツメディア『ゴールドットコム』の記者は「トッテナムファンはレジェンドを扱うひどい姿を見せた。ソン・フンミンは常に他の選手の2倍努力し、チームに献身してきた。こんな扱いを受けるべきではない」と指摘した。
ソン・フンミンは1月7日にトッテナムとの1年延長オプションを行使した。2025年6月までだった契約は2026年6月まで延長された。この選択がソン・フンミンにとって最悪の一手となる可能性もある。
ソン・フンミンが自由契約となった場合に獲得を検討していたチームは一歩後退した。トッテナムがどんでん返しに失敗し、降格することになれば、契約最終シーズンを自身初の2部リーグで過ごす最悪の事態となりかねない。
移籍の話が出るたびにトッテナムとロンドンへの深い愛情を語り、残留を選択してきたソン・フンミン。10年間、浮気せずにひたむきな愛を示してきたにもかかわらず、短期間の不振で返ってきたのは理不尽な非難だった。
はたしてソン・フンミンはこの危機をも乗り越え、トッテナムを救うことができるのだろうか。
(記事提供=時事ジャーナル)
■なぜ唯一、韓国バスケットボールのコート上では暴力や暴言がなくならないのか
前へ
次へ